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思えば自転車論壇から遠ざかって久しいのであるが。


警察庁交通局交通規制課・国土交通省道路局企画課
『道路標識、区画線及び道路標示に関する命令の一部を改正する命令案』に対する意見の募集について
2011年7月22日。


趣旨は簡潔である。曰く、

歩道又は自転車道において自転車が一方通行(標示板の矢印が示す方向と反対方向への自転車の通行を禁止すること)となるべきことを意味する規制標識を新設する。

つまりは標識の新設であって、新たに規制の定めを設けようとするものではない。


歩道であれ自転車道であれ、道交法第8条第1項に基づく一方通行の規制を行うことは現在でも可能であるはずだ。
歩道の場合は一方通行の本標識(*1)に加え「歩道を通行する自転車に限る」といった趣旨の補助標識(*2)を付加する必要はあるかもしれない。自転車道はもとより「一の車道」である(*3)から、対面交通の原則に一方通行の規制を行いうることは車道とかわりない。


今次改正案は、新たな図案による標識を定め、規制とその遵守をより容易に円滑に実現しようとする趣旨と理解する。


歩道または自転車道における自転車を一方通行にすることそれ自体は悪いことではないと思う。しかし。
自転車は車道を自動車と共有すべき交通手段である(*4)。自転車の歩道通行容認は一時的な弥縫策にすぎない。
自転車道は車道または歩道から構造物によって自転車を隔離するものである(*5)。その建設に多くの費用を要するのみならず、限られた道路空間の効率的利用を著しく阻害する点で問題が多い。
本案の標識が自転車の歩道通行容認の延命策となったり、安易な自転車道建設の便法となったりする愚は避けねばならない。


そもそも、歩道または自転車道における一方通行規制を広く行おうとする限り、その遵守を如何に確かなものとするかについての具体策は不可欠である。遵守されない規範(*6)の存在は社会悪であるといわざるをえない。



*1 道路標識、区画線及び道路標示に関する命令(昭和35年12月17日総理府建設省令第3号)

別表第1・同第2 規制標識
種類 一方通行 / 番号 (326-A・B)
表示する意味 道路法第46条第1項の規定に基づき、又は交通法第8条第1項の道路標識により、標示板の矢印が示す方向の反対方向にする車両の通行を禁止すること。
設置場所 一定の方向にする車両の通行を禁止する道路の区間の入口及び道路の区間内の必要な地点における路端


*2 歩道上の駐車について、「区画線内における自転車に限る」という補助標識を見たことがある。拙稿'09/10/4付


*3 道路交通法

第3章 車両及び路面電車の交通方法
第16条第4項 この章の規定の適用については、自転車道が設けられている道路における自転車道自転車道以外の車道の部分とは、それぞれ一の車道とする。


*4 自転車が車道を自動車と共有するための社会資本は、車道左側端に幅員の狭い自転車専用の車両通行帯を設けるだけでまず十分であろう。現行法で実現可能である。
 拙稿'09/4/8付もみられよ。


*4・5 道路交通法

第2条第1項 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
 同項第3号の3 自転車道 自転車の通行の用に供するため縁石線又はさくその他これに類する工作物によつて区画された車道の部分をいう。
 同項第7号 車両通行帯 車両が道路の定められた部分を通行すべきことが道路標示により示されている場合における当該道路標示により示されている道路の部分をいう。


*6 拙稿5/6付