私物感再び


1 端緒


すでに聊か旧聞に属することとはいえ。
某大学の助教授の肩書をもつかたのインターネット社会でのふるまいがほうぼうで話題になっているようです。
なんでも、東京の自転車はカラスより迷惑なんだとか。


ここではさしあたり、その論旨にはふれません。というか、私はとりあげる気にさえなれない、というのが正直なところです。ていねいに反論されているかたには、心より敬意を表します。
私が気になったのは、またぞろ、webの私物感、ということについてです。


2 経緯


助教授氏のweb頁には無断転載禁止とあります。
リンクも禁止なんだそうです。ただし、大学教官が個人で運営するサイトは除く、とのこと。
留学に関する頁には、専業主婦等の冷やかしお断り、との註記もあります。


以前は、助教授氏ご本人主宰の掲示板があったそうです。
助教授氏が「東京の自転車はカラスより迷惑」という趣旨の論文を公にされたあと、掲示板は氏の管理下を離れ、別の管理人が運営する形をとって継続されていました。
投稿の削除はしばしば行われていたようです。助教授氏あるいは管理人氏のお気に召さない投稿は随時削除されているとの趣旨の報告もありました。
その掲示板も6月末前後に閉鎖されました。アクセスすると「この掲示板は存在しません.」という表示があらわれるのみで、それ以上の説明がありません。過去の書き込みなど見れなくなっています。


閉鎖の少し前、助教授氏のホームページに、「エッセイ」募集の告知がありました。
都市の自転車問題の認識を広め、自転車利用を好ましい移動手段とするための建設的な意見を募集するという趣旨のようです。
応募作のうち、おもしろいものは氏のホームページに掲載し、その著者には、氏の勤務する大学の関連商品を進呈するとのこと。
氏の大学助教授としての職業とこの募集活動との関係は明らかではありません。公に審査して授賞するというものではなさそうです。


最近は、助教授氏のweb頁について、特定のアクセスを禁ずる設定がなされているとの指摘もあります。
どうなってるのかな、と思ったら、私もアクセスできないときがあります。6月末前後の変化と思います。
端末や時間によっては見れることもあるようです。


きょう、助教授氏の所属する学部の「ブログ」の存在に気づきました。
助教授氏が寄稿されているのは7月6日以降のようです。氏の寄稿含め、すべての頁に大学当局の著作権の表示があるようです。
"Opinion"というカテゴリーには、トラックバックを受ける機能があります。


3 所感


管理人氏運営のころの掲示板では、助教授氏の論文の読者の疑問などが真摯に提起されているという印象を私は持っていました。
しかしそれに対する助教授氏の反応は殆どなく、適切に対応されているようには思えませんでした。
公序良俗に反するとか、読者や関係者を徒に不快にするような投稿は寡聞にしてなかったと思います。


4 所論


4.0 要旨


webは私物ではない。発信したかぎり、意に添わぬ反応も不可避である。それを自他の目から隠すべきでないと考える。


4.1 発信と反応


webで社会に発信した、つもり。
しかし、発信したものが、自分の意に添わぬ形で扱われることは望まない。自分の気に入らない反応は見たくない。
なぜならweb頁は自分のもの、自分の土俵、我が家のようなものだから。気に入らない人は排除する。
このような私物感によって運営されているweb頁は意外に多いのかもしれません。
webは公開されるかぎり私物ではないと思います。


自分に関することで問題点を指摘されたり、反論されたり、といったことは、必ずしも心地よいことではないかもしれません。
でももし、自分の知らないところで、そのようなことが行われているとしたら。
私だったら、そのことのほうがよほど耐えがたいと思います。


4.2 問題は当事者へ


問題は当事者へ。自分の問題は自分へ。
というのは私の信条のひとつです。


「朋友の間、悪しきこと、過ちあらば、面前で言ふべし。陰でそしるべからず。うしろめたく聞こゆ。ただし、その善は陰でほむべし。」貝原益軒


この箴言に接したとき、なるほどと思いました。中学2年のときに使ってた手帳の欄外記事、1頁1格言という感じのものでした。
思うに朋友の間に限らず。インターネット社会においても然り。
こうした考えとweb頁の私物感というものは、相反するのではないかという気がしています。


4.3 統制の慾望


いやもしかしたら、発信したい、そしてそれをめぐる言説はすべて見たいけれど、気に入らぬものは他人に見られたくない、という発想がありうるのか。言説を自分で統制したいという慾望。
webの私物感はそういうところにも行き着くのかもしれません。


5 関連拙稿 


「社会への発信と私物感」
要旨: 社会への発信は反応を期待すればこそ。ネット社会における私物感は当事者の対等な関係を阻害する。私物はそれにふさわしい方法で扱えばよい。


6 付記

助教授氏のホームページにはトラックバックを受ける機能がないので、氏に宛てて次のメールを送りました。

件名 貴ホームページに関する記事のお知らせ


拝啓 初めてのメール失礼します。こぐと申します。
このメールは、貴ホームページに関して、私が下記の如く一文を草して公表したことをお知らせするためのものです。


個別の回答を求めるものではありませんので、貴殿の用いられる「メールの掟」なるものの適用外として、私の本名、専攻、職業などの自己紹介は控えさせていただきます。
拙稿では、貴ホームページの方針を尊重し、引用とリンクを控えました。固有名詞も開示しておりません。


拙稿に関してコメントがあれば、当該記事の「コメント欄」への投稿によりお知らせいただければ幸いです。
なお、このメールをお送りしたことにつき、内容とともに、拙稿に開示しておりますこと申し添えます。


以上お知らせまで。 敬 具 



当該記事
url  http://d.hatena.ne.jp/kogkog/20040714#1089737473
題名 「私物感再び」
要旨 webは私物ではない。発信したかぎり、意に添わぬ反応も不可避である。それを自他の目から隠すべきでないと考える。


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url  http://d.hatena.ne.jp/kogkog/20040520#1085064922
題名 「社会への発信と私物感」
要旨 社会への発信は反応を期待すればこそ。ネット社会における私物感は当事者の対等な関係を阻害する。私物はそれにふさわしい方法で扱えばよい。


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