思いがけぬ豊穣

、というか題だけ書いて寝ちゃったので続き。


J.S.Bach"Matthaeus Passion"
The Choir of King's College, Cambridge/ The Brandenburg Consort/ Conductor: Stephen Cleobury
(DVD)


HMVにて。古楽器のDVDなんかないかな、と思ってクラシックの棚を眺めてたら、マタイがあった。
演者はきいたことないし、輸入盤らしく、解説もなにもついてないし、得体がしれない。
値段は? 2100円だって!ますます怪しげだ。
まあ、マタイの映像商品なんてめったにお目にかからないから、買っとくか。安いから現代楽器でもいいよ。
動くマタイは初めてか。いや、生で見たことがあった。ラィプツィヒゲヴァントハウス、'90年横浜公演。


パッケージには声楽のソリストが記されてるだけで、演奏楽器はおろか、演奏者の表記もない。録音日時・場所も不明。
添付のブックレットには、無造作にドイツ語の詩が掲載されてるだけ。だいじょぶかね、と思いながら再生してみる。


聖堂の屋内を背景に、ききなれた序曲。テンポは速め。やわらかな音色。5.1chのほどよい残響。
絵はまあきれい。そんなに古い収録ではなさそう。


なになに、合唱は少年合唱で女声がないよ。こりゃ正統派の演奏なのか。楽器のクローズアップは未だない。
年端もいかぬ子供たちがよそ見したり、ときに歌詞が心もとなくて自信なさげに口を動かしてるさまなどもいとをかし。


#5 Du lieber Heiland du, 汝、尊びまつる救ひ主の君よ、
フルート重奏の導入部がアップになる。フルートではない、フラウトトラヴェルソなり。古楽器なり。
そしてアルトのレチタティーヴォ。と思いきや、男である。男装の麗人ではない。これがカウンターテナーというやつか!


#20 Ich will bei meinem Jesu wachen. 我は我がイエスのもとに目覚め居らむ。
導入のソロはただのオーボエではない、これがオーボエダモーレであったか!


#27a So ist mein Jesu nun gefangen. 斯くて我がイエスは今や捕はれたり。
フラウトトラヴェルソオーボエダモーレのそれぞれ2重奏にのせて、ソプラノとカウンターテナーの重唱。これがまるで違和感ない女声重唱のよう。


#34 Mein Jesu schweigt zu falschen Luegen stille, 我がイエスは嘘偽りの証にも黙し賜ふ、
重厚な通奏低音を奏でるのはヴィオールとヴィオラダガンバ。いずれも6弦、指板にはフレットがある。


#49 Aus Liebe will mein Heiland sterben, 愛よりして我が救ひ主は死に賜はむとす、
フラウトトラヴェルソのアップに続いて登場するのは、弧状の管の重奏。これがオーボエダカッチャか!
やわらかな、包みこまれるような音色。


というわけで、おそらく正統的な古楽器演奏でした。全曲165分。2100円というのは破格。
マタイとは、古楽演奏とは何か、と問われたとき、このようなDVDが手軽な回答たりうるかもしれない。
そりゃマタイの名演はリヒター58年版*1を筆頭に数多あるといえども。


添付の詩がドイツ語だけなので、英語か日本語の訳を伴うと便利であろう。
まあ、手許にマタイ傳があれば、つきあわせればおよその筋は追えるかもしれない。
さらに慾をいえば、詩の字幕くらい出してくれると、いっしょに歌えるのにな!