野営続報

。撫子号の完全平面の床は思いのほか寝心地がよくて、すぐに安らかなる夢路を辿る、、間もなく、携帯電話の着信音に起こされます。
あゆこさんから、テント浸水とのこと。寝ぼけ頭で、車内もう1人寝れそうだよ、きささんはだいじょぶ?というのがやっと。
相変わらず雨音激しい。心なしか風も出てきたような音です。寝袋を出て防水服を着て外へ出る気にはさらさらなれず。


車内は1人増えて、寝返りの範囲は狭まったけど、去年の富士山の小屋より快適。
きささんも車内に避難したそうです。
それにしても、あゆかごで悠々と眠るあゆがいちばんらくちんだったに違いない。


目覚めると外は明るい。雨はあがったようです。
外で声がしだしたので起きだします。雀の囀りをきいたのは夢の中だったか?
時刻は5時すぎ。東雲から日がさしています。


なにごともなかったかのような野営地。しかし夜が明けるまでの間に、そこにはさまざまなドラマがくりひろげられていたのであった!
わたくし寝てる間に復旧作業にいそしんでくださったみなさま、ありがとうございました。


さて朝ごはんです。雀です。昨晩は牛れば馬はつでおなかいっぱいになったので、雀は朝にとっといたのでした。
雀は朝喰ふにかぎる!
みんなでわけようと思ったのに、誰も食べないの?じゃあ5羽ぜんぶいただいちゃいましょう!


それにしても、獲れたてを羽と皮だけぺろっと剥いたような雀はうまそう。
生でしゃぶりたいのをこらえ、軽く炙って香ばしそうになったところを頭蓋骨からばりばりといきます。
脳髄や内臓のほどよい苦み、肉の鳥くささ、うー、たまりません!
さすがに脂ののった寒雀とはいかないけれど。

ラムネの玉くらいの小さい頭も全部ばりばり噛みくだいてたべるのである。頭の中の味噌はまた素敵においしいという事になっていた。

 太宰治「チャンス」、1946年。


さて、朝から肉食文化はどうも、というかたのために、次なるメニューは。
これぞ魚食日本の伝統、くさやであります。
ごはんがあまってるから茶漬にしよう。どなたかご希望のかた?
応じてくれたのはきささんです。「これを逃したら一生食べることはないでしょ」って、さすがというべきか。
思い起こせば、近江から大阪へ走った折、仁和寺の朝の宿坊を鮒鮨の香りで満たしたなんてこともありましたね*1


ではきささんに品種を選んでいただきましょう。飛魚もいいけど、ここはオーソドックスに青むろ鯵ということで。
東京都大島町差木地字クダッチ、マルツ商店の説明書きに曰く、

素焼きにして細かくちぎり、あたたかい御飯にのせてのお茶漬けは、朝の食欲不振を吹き飛ばす、最良薬です。


焼くほどに立ちのぼる芳香。
きささんは濃ーいお茶を沸かして、カテキン葉緑素で対抗しようという魂胆でせうか。
みなさん、香りで誤った先入観を抱いてはいけません。
くさやの滋味は極上の鰹節を上回る深さを備えていると思います。


お茶漬を啜るうち、お茶にもくさやのだしがしみわたって、椀全体が妙なる風味を醸しだします。
活力ある1日の始まり!