未来のための現在

kogkog2009-12-30


「トウキョウタルビ」昨日付で「愛煙家おじいさん登場、児童誌が販売中止に」という読売新聞報道を知る。
さて、「児童誌」原典を見ないことにはなんともいえないにしても、またぞろ禁煙ファシズムなどというものをでっちあげる勢力を利するようなできごとなのか。


記事にある「喫煙に反対する団体など」のひとつは特定非営利活動法人 日本禁煙学会であるらしい。「タバコ礼賛『たくさんの不思議2010年2月号』の不当性について」という書翰が公表されている。12月27日付で文科相以下図書館関係諸団体、当該出版社に宛てたものである。
これをみるかぎり、当該出版物を不当とする根拠はごく常識的なものと思う。この書翰の内容に関しては読売報道は十分に伝えていないようにみえる。


いうまでもなく、現在の積み重ねが未来を形づくる。
未来のために現在の現実のひとつひとつを変えていくことは、喫煙が社会に容認されていた過去の文化を隠蔽したり改変したりすることの不毛とは区別して考えたい。


以下引用。

                             平成21年12月27日


川端達夫 文部科学大臣
鈴木勲  全国学図書館協議会会長様
森田盛行 全国学図書館協議会理事長様
塩見 昇 日本図書館協会理事長様
全国公共図書館協議会会長様
塚田和敏 福音館書店社長様


                     NPO法人 日本禁煙学会 理事長
                           作田 学
               162−0063、東京都新宿区市谷薬王寺町30−5−201
           ファックス 03-5360-6736 E mail http://www.nosmoke55.jp/


タバコ礼賛「たくさんの不思議2010年2月号」の不当性について


 「たくさんのふしぎ」2010年2月号「おじいちゃんのカラクリ江戸ものがたり」(太田大輔文・絵)は全編にわたってストーリーとは関係なく喫煙シーンが頻繁に描かれ、本文にもタバコ・パイプを礼賛する内容が記されており、子ども向けの絵本としては教育的にあり得ない恥ずべき本となっています。
 これが現在ほぼ全国の図書館で児童・幼児に閲覧可能状態になっております。同雑誌においては、喫煙は健康上何ら問題がなく、「好き嫌い」や趣味であるという価値観を誘導するような子どもの発言が随所にみられ、現在の科学的認識を捻じ曲げ、児童・幼児の喫煙についての正しい認識の育成を著しく損なう恐れがあります。
 日本も批准しているタバコ規制枠組条約(FCTC)の13条のガイドライン第4項(a)においては「騙したり、誤解させたりあるいは誤った印象を形成して製品を売り込むいかなる形態のタバコ広告販売促進活動、スポンサー活動を禁止する」とあり、明らかにこれに抵触する行為と考えます。つきましては、以下に問題点を記述しますので、資料として蔵書することはともかく、書架において児童・幼児の閲覧に供することは直ちに中止するよう求めます。「図書館の自由」も、日本政府が世界保健機関(WHO)で批准締約したたばこ規制枠組み条約(FCTC)を遵守する制約のもとにあるべきものと思料いたします。     
                  記


1.喫煙容認と受動喫煙を警戒させないシーン等
「喫煙シーンが9ヶ所も存在するだけでなく、「おじいちゃん」は常時パイプを吸って孫たちに受動喫煙の害を被らせ、かつ、それへの警戒心を抱かせないようにさせ続けている。
2.本文中の「たばこ」または「パイプ」の記載が5ヶ所
 その中でも、「大好物のたばこ代に」「お気にいりのパイプをほこらしげにひとふき」「おじいちゃんも喜助さんも、たばこ好きだもんね」などといった表現で、タバコの害を伝えないどころか喫煙を「良いもの」「嗜好品」だという意識を児童・幼児に植え付ける内容になっている。
3.巻末に「協力=岩崎均史たばこと塩の博物館)」の記載がある。「たばこと塩の博物館」は、法的には公的団体とみなされているが、その運営はJT・日本たばこ産業株式会社が行なうものである。
 このような形で本来の内容と関係なく喫煙シーンを潜り込ませる手法は、テレビドラマなどでも頻繁にみられるところであり、たばこ規制枠組み条約(FCTC)などにより広告が規制されているタバコ会社が世界的に用いている巧妙な「隠れ広告」の常套手段である。いかなる協力があったのか明らかにしてほしい。
 喫煙防止教育は高校生になって始めたのでは「手遅れ」であり、中学生から、小学生へ、そして児童・幼児のうちにこそと対象をシフトさせる考え方が重視されている時代であるだけに、無意識のうちにタバコについての誤った認識を持たせる当該「児童雑誌」の悪影響は計り知れない。


  上記について、子どもたちの間に誤った理解がなされる恐れがあり、早急なる対策を求めます。                           
以上

第159回国会提出条約 たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約
第13条 たばこの広告、販売促進及び後援
第4項 締約国は、憲法または憲法上の原則に従い、少なくとも次のことを行う。
(a) 虚偽の、誤認させる若しくは詐欺的な手段又はたばこ製品の特性、健康への影響、危険若しくは排出物について誤った印象を生ずるおそれのある手段を用いることによってたばこ製品の販売を促進するあらゆる形態のたばこの広告、販売促進及び後援を禁止すること。

愛煙家おじいさん登場、児童誌が販売中止に
(引用者註・記事添付の画像は「福音館書店が販売中止を決めた月刊「たくさんのふしぎ」2010年2月号」、上掲。)


福音館書店が販売中止を決めた月刊「たくさんのふしぎ」2010年2月号 福音館書店(塚田和敏社長)は28日、月刊「たくさんのふしぎ」の2010年2月号として発売した「おじいちゃんのカラクリ江戸ものがたり」(文・絵、太田大輔)を販売中止にすると、ホームページで発表した。
 対象年齢は小学校3年生からで、発明家のおじいちゃんが2人の孫に江戸時代の暮らしを説明する内容。おじいちゃんはたばこ好きの設定で、喫煙したまま孫たちと同席する場面が何度も描かれている。
 喫煙に反対する団体などから「たばこを礼賛している」「たばこ規制枠組み条約に違反する」といった指摘があり、同社は販売中止を決定した。
 ホームページでは、塚田社長名で「(たばこは)小道具として使用したものであり、喫煙を推奨したりする編集意図はまったくありません」と説明。「しかしながら、子どもの本の出版社として配慮に欠けるものでした」と謝罪した。
(2009年12月29日05時08分 読売新聞