当事者能力

昨日付4/13付などからつづく。
なぜ当社経営は株主総会をIR*1に活用しようとする意思をもたなかったのか。総会を茶番にしたのはなぜか。


配当も株価維持も不可能になり、株が配当利回りでも成長期待でも買えなくなった途端、市場の関心はテクニカルな値動きにしか向かうまい。今後の資金調達手法においてエクイティファイナンスはありえまい。
他方、減資など株主が負担を求められる可能性が消えたわけではないにしても、政府が「原子力事業者を債務超過にさせない」*2という方針を決めた途端、機関投資家損切りで売る積極的な動機を失うのであろうか。当社の既存の安定株主に劇的な変化は訪れにくいのかもしれない。
となると、「継続企業の前提に関する重要な不確実性」*3を左右する財務上の経営判断は、専ら株ではなく債券発行や金融機関借入の領域に移ろう。起債市場は債券格付けに反応するから、当社の格付けに圧倒的な影響を及ぼす規制環境のあり方が財務上の最大の関心事となる。金融機関借入の可能性は市場原理を離れ規制環境の一部をなすかのように政治過程の範疇に入っていかなければもはや成り立ち得ない。
このように考えると、安定株主が経営方針に異を唱えないかぎりで、泡沫株主などもはや重要な利害関係者ではないという判断は一見合理的であるようにもみえるが。


そうではあるまい。
当社経営は、株主と総会の背後に世論があること、そしてそれが政治過程に、したがって規制環境のあり方に影響を及ぼしうることを等閑視してしまっている。この点だけをとらえても、株式会社としての当事者能力において致命的ではないか。
いや、株式会社経営の当事者能力など、当社には今般の人災以前から存在していなかったのかもしれない。
原子力事業運営の当事者能力と同じに。

*1:invester relations, 投資家広報。

*2:'11.5.13. 原子力発電所事故経済被害対応チーム、関係閣僚会合決定

*3:当該報告書における連結注記表、個別注記表及び独立監査人の監査報告書。