自家用車の贅沢


自動車を所有するよりタクシーを使ったほうが割安、という話をよくききます。
偶々検索で見つかったのが長野県タクシー協会試算
「タクシーに365日毎日約11km乗ってもまだ安い」とのことです。少し検証してみます。


この試算は、235万円の自家用車で年1万km走行、燃費10km/l、燃料105円/l、5年間保有して残存価額ゼロ、という設例です。
5年間の総費用が542万円。1日あたり2968円で、これが小型タクシーで11km走る運賃に相当するというわけです。
しかし、自家用車で年1万km走るということは、1日あたり27kmです。同じ2968円で、自家用車のほうが倍以上の距離を走れることになります。


では自動車を保有すること自体にかかる費用は何程か。
上述の費用から燃料費を引くと、5年で489万円、1日2681円。1万km走る場合と287円しか違いません。
287円は27kmを走る燃料費と同義です。保有の費用を固定費、燃料費を変動費と見做しうる所以です。
タクシー運賃と距離が正比例関係にあるとして損益分岐点を計算すると、1日10.3kmほどになります。そのときの費用は2789円。


以上の設例からは、1日10.3kmほど走らなければ、タクシーより自家用車が割高、ということになると思います。
ただしこれは、さまざまな大胆な前提をもとにした試算です。前提を現実に近づければ、自家用車の損益分岐点はより高くなるのではと思います。
あるいは、自家用車の代替交通手段をタクシーに限らなければ、より廉価な他の交通手段を使う機会が多くなるほど、自家用車を選択する場合の損益分岐点は高まることでしょう。


自家用車をもち、いつでも好きなように使用できるという贅沢。
もとより、何が贅沢かということは、個人の価値観やその反映としての生活様式と不可分に結びついたもので、経済合理性だけでわりきれるものではありません。


ただ、自分で自動車を運転するとき、事故の加害者となる危険を負っているということも忘れてはなりません。
タクシーに乗っているとき、交通事故被害をうけることはあっても、自分自身が直接の加害責任を負うことは殆どないと思います。