自転車の車道通行禁止法案に関する経緯まとめ

「自転車は車道を通るべからず」という道交法改正案が準備されつつあるとの噂に関して、経緯をまとめます。
番号と記名を付したものはいずれも疋田智氏主宰「自転車ツーキニストのための掲示板」への投稿、他はこの日記の記事です。


1. 国家公安委員会回答をめぐって


1.1 経緯
2005/04/21 22:18 21404 法案が提出される前に こぐ 
2005/04/22 03:02 未確認情報への対応
2005/04/25 01:56 国家公安委員長殿
2005/05/19 15:35 速報・国家公安委員会からの回答文


1.2 議事録
国家公安委員会 平成17年委員会の開催状況 5月19日分には、次の記述以外、この件に関する言及はありません。

第3 議事の概要    
1 議題事項
(5)国家公安委員会への意見・要望文書等の措置について
国家公安委員会あての電子メール、書簡等について閲覧し、回答を要するか否かの判断を行った。回答を要するものについては、一部修正の上、その内容を了承した。


1.3 解釈


1.3.1 私見
2005/05/19 20:53 21712 作文解釈 こぐ

国家公安委員会からの回答を私も得ました。
「記事は事実を踏まえたものとはなっていない」との文は、記事が事実の裏づけを示していないというにとどまり、事実の存否について述べているわけではないと思います。
私の疑念は却って深まりました。詳細下記。(略)

2005/05/20 08:28 21720 国家公安委員会回答について こぐ 

国家公安委員会の回答文は、官僚の作文としてみごとなものと思います。
嘘をいわず言質を与えず事実を隠すという点において。下記拙稿(略)。

2005/05/19 19:47 官僚作文の解釈例2005/05/19 22:52 官僚作文の要諦と実践

(略)枠内、回答文に私の解釈を ( ) で補います。

(第1文) お読みになられた雑誌の記事は、事実を踏まえた (、つまり事実の裏づけを明らかにした) ものとはなっておりません。
(第2文) 警察においては、我が国における (自動車最優先の) 交通体系の中で、自転車の役割と位置づけを (歩行者と同等のものとして) 明確にしつつ、自転車の安全利用を推進 (するため、その車道通行を制限) すべきものと考えております。

「雑誌記事のいうような法改正検討の事実はない。」といえないのはなぜか。(略)

第1文: 記事が事実の裏づけを示していないというにとどまる。事実の存否について述べているわけではない。嘘をいわずに事実を隠している。
第2文: ( ) の内容によっては反対の意味にもなる。( ) を補わなければ何もいっていないに等しい。どちらにもいいぬけできるようにしてある。


1.3.2 疋田氏ご見解
6/20発売の雑誌記事で疋田智氏が同様の見解を示されています。
疋田智「問題解明集中連載企画 第2回 疋田智の『道路は誰のものですか?』」
"BiCYCLE CLUB"2005年7月号、㈱*(えい)出版社。(*偏「木」旁「世」。)

この回答はいかようにでも、いつにでも、ひっくり返すことが可能だ。キツい言い方をすると、答えていないのと同じなのである。

「言質をとられたくはないがウソは言えない」という官僚作文の見本(略)


2 行政文書開示請求顛末
国家公安委員会から回答を得た翌日付にて、情報公開法に基づく行政文書開示請求を行いました。決定は文書不存在につき不開示。
2005/05/20 13:08 行政文書開示請求書
2005/05/24 12:44 開示請求の次
2005/05/29 02:35 不存在につき不開示


3 官僚の内情?


3.1 「当該官僚」氏の影
私の記述について、「当該官僚」と名のるかたからコメントが寄せられました。
5/19付コメント欄

# 当該官僚さん 『曲解です。本当に検討してませんので。』 (2005/05/19 20:28)

5/24付コメント欄

# 当該官僚さん 『いや、本当に検討してないんですけど。。。』 (2005/05/24 21:09)
# kogkog 『当該官僚さん、あるべき交通体系の姿とそこでの自転車の役割と位置付け、自転車の安全利用を推進するための具体的方策などについて、警察行政がどのように考えているのか、ぜひ明らかにしていただきたく存じます。万機公論に決すべし。』 (2005/05/25 00:31)

もしかしたら当該官僚さんご指摘のとおりなのかもしれません。警察庁情報公開室との電話やメールでのやりとりの中でも、担当官から「どうも交通局で法改正検討の事実はないようですよ」とのお話を伺っていました。


3.2 幹部重鎮氏の影
上掲雑誌記事には次の記述もあります。事実として存在するのは、このようなことくらいなのかもしれません。

実は警察庁内部には「日本の交通の中で、自転車はとにかく悪である」と主張する警察幹部重鎮と、その一派がいる。これは確かだ。

この一派の中心人物はもうすぐ定年退職なのだという。とりあえずは安心してもいいはずだから、とは、とある実力者の話だ。

とはいえ、退官後の傑物が現役官僚に隠然たる影響力を及ぼすというのはありそうな話なので、油断は禁物ですね。


4 当面の方策
現在、新たな内容での開示請求について警察庁情報公開室と折衝を進めています。