歩行者との共存

。下掲記事について一昨日、大阪府警察本部交通総務課に電話で訊いた結果。予想どおりでした。


1 報道文
「日経ネット関西版」7/14付既出・太字引用者

(前略)。幅3メートル以上の広い歩道には中央線を引き、車道側を自転車専用にして歩行者と通行を分離する方針。


 府警によると、市町村が歩道を新設する際に自転車専用道を設ける例はあるが、府内全域で既存の歩道の通行を分離するのは初めてという。(後略)


2. 大阪府警交通総務課回答要旨(文責kog)


2.1 「幅3メートル以上の広い歩道」に「中央線」を引くことによって「分離」される「車道側」の部分とは、
 「『道路標識等』(道交法第2条第1項第4号)により」
 「普通自転車」が「通行することができることとされている歩道」(同第63条の4第1項)の一部であって、
 「自転車道」(同第2条第1項第3号の3)ではない。


2.2 歩道の「中央線」は、
 「法定外表示」*1に該当するものであって、
 道路標示(道路標識、区画線及び道路標示に関する命令第9条第10条別表第5別表第6)ではない。


2.3 もとより、「中央線」の有無にかかわらず、次のことにかわりはない。
 2.3.1 「普通自転車」は原則として「当該歩道の中央から車道寄りの部分」を「徐行」しなければならない(道交法第63条の4第2項)。
 2.3.2 歩行者は「中央線」の有無にかかわらず「歩道の中央から車道寄りの部分」を通行しても法令上の問題はない。
 2.3.3 「普通自転車」はその進行が「歩行者の通行を妨げることとなるときは、一時停止しなければならない」()。


3 所感


3.1 上掲報道文には問題がある。
 2.3.2より、「車道側を自転車専用にして」という報道文は誤りだし、それに続く文も、府内全域に「自転車専用道」が設けられるかのような誤読を招くおそれがある。
 

3.2 当該「法定外表示」は必ずしも無意味とは思われない。
 法令上の規制標示ではないとはいえ、その表示によって「自転車が歩道を走るときは車道寄り」という法令の定めが守られるようになるなら、それは無意味とは思われない。
 ただ、「歩道上に自転車通行の区分があるのだから、自転車は車道を走るな」という誤解が生ずるようなことがあってはなるまい。


3.3 当該施策は、自転車と歩行者が歩道で共存するためのものである。
 自転車の交通手段としての機能を十全に発揮するために、自転車と自動車などが車道で共存するみちを探ることを怠ってはなるまい。


4. 法令抄


4.1 道路交通法

第2条第1項 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
同項第2号 歩道 歩行者の通行の用に供するため縁石線又はさくその他これに類する工作物によつて区画された道路の部分をいう。
同項第3号の3 自転車道 自転車の通行の用に供するため縁石線又はさくその他これに類する工作物によつて区画された車道の部分をいう。
同項第4号 (略)道路標識又は道路標示(以下「道路標識等」という。)(略)。


第63条の4第1項 普通自転車は、第17条第1項の規定にかかわらず、道路標識等により通行することができることとされている歩道を通行することができる。
同条第2項 前項の場合において、普通自転車は、当該歩道の中央から車道寄りの部分(道路標識等により通行すべき部分が指定されているときは、その指定された部分)を徐行しなければならず、また、普通自転車の進行が歩行者の通行を妨げることとなるときは、一時停止しなければならない。

4.2 道路標識、区画線及び道路標示に関する命令(昭和三十五年十二月十七日総理府建設省令第三号)

第9条 道路標示の種類、設置場所等は、別表第5のとおりとする。
第10条 道路標示の様式は、別表第6のとおりとする。


別表第5
 規制標示
  種類 普通自転車の歩道通行部分
  番号 (114の2)
  表示する意味 交通法第63条の4第2項の道路標示により、普通自動車が歩道を通行する場合において、通行すべき歩道の部分を指定すること。
  設置場所 普通自動車が通行すべき部分として指定する歩道の区間又は場所


別表第6(略)