考えかたを見なおす

5年ほど前、鬱病についての一般向け概論書を何冊も集中して読んだことがあります。患者としてとしてではなく、ですが。そのときの印象をひとことでいうと。


鬱病は脳内の神経伝達物質代謝異常によって起こる病気である。ゆえに服薬治療が有効。とはいえ。
自分の考えの歪みを認識し、それを変えることで、社会的な行動を、したがって病状を改善することもできる。これを認知療法という。


とりわけ下掲書は、こと鬱病治療に限らず、もののみかた考えかたや人の生きかた全般にわたるともいえる示唆に富むと感じられました。
問いについて考え記入していく「練習帳」形式というのが米国流のマニュアル的な方法論の一端のようで興味深くもありました。
うつと不安の認知療法練習帳 Greenberger, Dennis;Padesky, Christine A.、大野裕 監訳、岩坂彰 訳「うつと不安の認知療法練習帳」
(MIND OVER MOOD : Change How You Feel by Changing the Way You Think)創元社、2001年。ISBN:9784422112695 (4422112694)


認知療法を思い出したのは、近ごろ話題の?下掲書を読んでです。
笑って禁煙できる本 禁煙研究家ワイネフ 文・大里 圭介 イラスト「笑って禁煙できる本」白夜書房、2007年。ISBN:9784861912597 (4861912598)


煙草依存症という病気を治療するには、ニコチン離脱を円滑に行うための薬物療法も有効なのでしょう。
他方、鬱病治療における認知療法に相当する方法論もありうるはず。本書は煙草依存症の認知療法を愉快に実践するためのものというのが第一印象でした。
患者でないわたくしにして、禁煙を実践するための本を読むのは初めてのことです。


両書とも、鬱病治療や煙草依存症治療と無縁の読者にとって、考えかたや生きかたを見つめなおすのに有益なものとして、ひろくおすすめします。
自分の考えの傾向を相対化する試みは永遠の課題ですね。