「素案」に欠けているもの

拙稿5/17186/1117付などでとりあげた「新たな自転車利用環境のあり方を考える懇談会」。
わたくしのまわりの自転車関係者の間では、今ひとつ関心が高まらなかったような気がします。
誰か危機感を煽るような人でも出てこないとこんな感じなのかな。


そんな中、掲示板「自転車社会学会」へ傍聴録の所在を投稿した*1ところ、主宰者の門岡淳さんが拙稿を引用してくださいました。
自転車社会学会「新たな自転車利用環境のあり方を考える懇談会」


追って門岡さんご自身のコメント掲出。各論につき至当と存じます。
同「『安全で安心して通行できる道路空間の実現に向けて』へのコメント」


さて、「安全で安心して通行できる道路空間の実現に向けて(素案)」に欠けていると私の考える論点は、拙稿17日付でも言及したとおり、次のように集約できそうです。


その1。自転車は車両として車道を自動車と共有するものであるということは、自転車利用者にのみならず、自動車運転者にこそ徹底して教育すべきである。

 なんとなれば、
 第一に、自動車のふるまいを改めなければ、自転車にとって安全快適な車道は実現しえないから。
 第二に、自転車にとって安全な車道がなければ、歩行者にとって安全な歩道は実現しえないから。
 第三に、他者を邪魔と思う人の心を克服しなければ、道路交通の安全と円滑は実現しえないから。


その2。自転車に特定の空間の通行を強制することは避けるべきである。自転車交通全般の安全と円滑を脅かすことになりかねないからである。
 自転車が車道を通行するのは適法である。とりわけ自動車に代替しうる交通手段として高速走行する自転車は、交通の安全と円滑の両面から、車道通行が妥当である。
 しかし、歩行の代替手段のように自転車を用いる人にとって、自動車によって齎される車道の危険を所与とするかぎり、歩道通行がより安全にみえる場合もあるかもしれない。
 道交法は自転車の車道通行を原則として定めている。今次改正法における歩道通行容認の条件緩和は例外の選択肢拡大にすぎない。
 自転車利用者の行動様式や遵法意識が多様であるならば、それぞれに適した通行空間を選択しうる余地を残すことが得策かもしれない。
 現行法では普通自転車は自転車道の通行を強制されるうえ、自転車道内左側端通行による対面交通を強いられるなど多くの問題を孕んでいる。


現行法における「自転車道」の問題については拙稿2/4付「隔離政策としての自転車道」
「自転車レーン」「自転車の通行ゾーン」などに関する問題については同5/14付「自転車隔離でよいのか」


翌日につづく。