「新たな自転車利用環境のあり方を考える懇談会」第3回傍聴記

6/28開催、同日付に画像掲載。
傍聴記まとめにもたもたしてるうち、最終レポートができあがっちゃいました。

国土交通省「新たな自転車利用環境のあり方を考える懇談会からのレポートについて」平成19年7月5日
「これからの自転車配慮方道路における道路空間の再配分に向けて −歩行者と自転車の安心と安全を守るために−」
最終レポート骨子


以下、議場での鉛筆書きメモから再現。文責kog。


第3回 新たな自転車利用環境のあり方を考える懇談会


日時:平成19年6月28日(木) 10:00〜11:45
場所:霞ヶ関ビル33階 東海大学校友会館 富士の間


懇談会メンバー
座長 屋井 鉄雄   東京工業大学大学院 総合理工学研究科教授
  勝股美代子   消費生活アドバイザー
  古倉 宗治   財団法人 土地総合研究所 理事
  小林 成基   NPO法人 自転車活用推進研究会 事務局長
  森山 みずほ  モータージャーナリスト


(欠席)代理出席者
 (小竹 一枝   NPO法人 女性みちみらい上越 理事)
  野本  同 理事長
 (関  一    財団法人 全日本交通安全協会 常務理事)
  野上  同 安全対策部長


欠席
副座長 久保田 尚  埼玉大学 工学部教授
  片山 右京   レーシングドライバー


その他出席者
  国土交通省 下保 地方道・環境課長 / 後藤 道路交通安全対策室長
  警察庁  太田 交通規制課長 / 早川 交通企画課交通安全企画官
  事務局


0:00(経過時間、以下同。)
事務局:  資料1・3、参考資料4、資料2について説明。


0:27
勝股: 数日前、いたましい報道があった。
 80歳の自転車乗りのかたが日本1周を終え自宅まであと30kmのトンネル内でダンプカーに追突され亡くなられた。自転車と高齢者や自動車との関係を考えさせられる。
 この事故について警察庁に照会したところ、トンネル内に歩行者の歩く道はあるが、自転車のための空間はないとのこと。
 歩道のないトンネルも多い。自動車運転者はトンネル内を自転車が走っていると思っていない。歩道があっても壁にはりついて歩くような狭さである。
 国土交通省観光庁を設けるやに聞く。観光にも歩く、自転車に乗るという視点がほしい。
森山: 資料2「(案)」はよりまとまってわかりやすくなってきた。
 しかし、自転車と自動車の安全面での調和という視点が抜け落ちている。自動車の利用空間を変えねばならない。それが調和をもたらす。
 関連して、自転車にITSを活用する案はどうか。11頁4(5)に書くのがよいか。
 自転車の走行空間を特定しにくいが、モデル地区で試行するのがよい。
 これまで発信機側の電池交換の問題があった。自転車通学証に発信機を埋め込めば、毎年更新で電池交換もできる。
 走りたくなる自転車走行空間をつくることが重要である。
小林: 自転車競技では通過検知のチップが実用されている。


小林: 「(案)」について言いたいことを言わせていただく。
 ・表題も本文もすべて、「歩行者」を先に、「自転車」を後に、表記すべきである。
 ・同様に、「安心」を先に、「安全」を後に。町を歩く国民には安心に関心がある。
 ・2頁、今後増加が予想される高齢者の車椅子についても言及したい。歩道は歩行者へ返さねばならない。
 ・5頁、普通自転車の定義を見直す時期にきているのではないか。子供を乗せた車両を牽引する方式だと全長2mを超え、普通自転車ではなくなる。
  目や耳の不自由な人がタンデム自転車に乗ったときの感動ぶりは筆舌に尽くし難い。なのに、タンデムは長野県以外では条例で認められていない。
  普通自転車の範疇でなくてもよいから、タンデムを法令で認めるべきである。
 ・6頁、「これまで道路整備は自動車中心に進められてきたが、今後は(略)、自転車や歩行者の通行も重視した、(略)。」とある。
  これは「自転車や歩行者の通行を重視した」とすべきである。
 ・7頁、「交通量等の実態を踏まえ」という記述は、将来を見越した表現に改めたい。
 ・同、「車道(車線数)等のあり方」というのは、じつは車道を削って自転車通行空間を生み出すとの意味もある。それを明記したい。
 ・同、4.(1)マル1の所謂「自転車道」は、自転車の走行空間という表現にすべきではないか。
 ・関連して、自転車横断帯について。現行の自転車横断帯は自転車の歩道通行を前提としたものである。
  車道を通行する自転車が自転車通行帯のある交差点を直進しようとする場合、法令に遵うと、いったん左折するような形で自転車横断帯に入らなければならず、自動車による巻込み事故を誘発しかねない。こうした場合の車道直進を法令で認めるべきである。*1
 ・8頁、「標識等の設置を工夫すること」について。表示内容は日本語ではわからない。 
  また、シニアカーの老人などは、路面ばかりみて上を見ていないことにも留意すべきである。
  同、4.(1)マル3に書くのが適切かどうか、予算についてふれたい。交通安全対策予算は減っている。両省庁協力した予算獲得を望む。
 ・10頁、(4)戦略的整備の「速やかな」展開とあるが、タイムスケジュールについてどこかでふれたい。


交通安全企画官: 普通自転車は標識のある歩道通行可で、自転車道を通行する義務がある。
 普通自転車の定義含め、直ちに見直すことは難しい。子供を乗せた車両を牽引する自転車が歩道に上がってきてよいかという問題もある。
小林: 将来の課題でもよいからふれてほしい。
 その他、原付は筆記試験だけで免許を受けられるが、それでよいのか。大型二輪よりも安全とはいえない。
 原付と自転車の境界も曖昧である。欧州では電動アシスト自転車のパワー比が1:2とか1:3のものがあり、アルプスでも登れる。
 しかし日本では1:1にとどめられている。原付という範疇があるがゆえであろう。法令の制約がイノベーションを妨げている例ではないか。
座長: 私はシクロという旅客運搬自転車を3輛持っている。客席が後、横、前の3種である。
 レポートには提言的なものを鮮明に記したい。とりわけ走行空間について鮮明に。
 実現に何年かかるのかわからぬようなものでは曖昧である。短期で推進できるものは明確に示しうる。
 タンデムの話題とか、レポートにどこまで入れられるのか、事務局の判断も必要となろう。
 歩行者を先に、自転車を後に、という表現の順序は妥当であろう。「自歩道」という語は既存でやむをえまいが。安心・安全という順も妥当。
 自転車横断帯の問題についても言及したいが、検討を要しよう。標識の内容も重要な問題である。
 予算に関しては、7頁に「国土交通省警察庁の連携及び積極的な予算的・技術的な支援が必要である。」との記述がある。
 タイムスケジュールについては、「速やかに」という表現が何をさすか、書き込めるなら入れたい。
交通規制課長: 制度設計はモデルを活用して進めたい。
 予算は全体に相当減っている。その中で、歩行者・自転車優先のポジティブな政策に重点をおきたい。
 マイノリティ向けであっても安全予算を減らさぬようにしたい。
 ITSは、自転車専用空間を特定できるなら可能であろう。交差点をどう扱うかが難しい。モデルにより試行錯誤するほかなさそうである。
 予算に関して警察庁は肩身が狭い。国土交通省と連携したい。


古倉: 私の意見の多くを小林委員が代弁してくださった。少々追加する。
 米国などでは、ガソリン消費を減らすため、自転車への転換を進めるのに相当の予算を割いているときく。
 「(案)」について、まず文言から。
 ・1頁冒頭パラグラフ最終段落、自転車の安全性に加え、快適性という語を加えたい。快適性は安心を包括すると思う。
  安全もさることながら、それと区別される概念として安心や快適性を掲げる。この実現が自転車の利用促進につながる。
 ・10頁冒頭、歩道上における自転車の通行マナーについて、「歩行者優先」を明記したい。
  弱者優先を原則とするといいながら、次段落で、歩行者に対し自転車に遠慮せよというのはおかしい。
 ・12頁最後、「地下化した道路上に自転車道を整備する」ほか、連続立体交差を自転車に活用することについても書きたい。
 内容についてはまず、8頁(1)マル4、11頁(5)などに関して、自動車と自転車を分離できない空間をどうするか。
 トンネル内など、自転車と自動車が共用する空間であることをドライバーにどう周知するか。入口に看板等で明示するか。
 共用空間における安全確保は大きな課題である。施策については地域の意嚮を反映させることもだいじである。
 このことが11頁のネットワーク概念につながる。分離策だけでカバーできない問題は大きい。
 将来については、たとえば欧州では大陸横断6万kmとか、独ではアウトバーンと同等の12千km、英でも15千kmとかの自転車ネットワーク計画があるときく。
 ネットワークというとき、それは必ずしも自転車で長距離旅行といった範疇とは限らない。
 通勤通学など、地域で自転車を活用するためにこそネットワークが重要である。


座長: 英国では”national cycling network”という標識をよく見かける。
 先日のトンネル事故は痛ましい。自動車に周知すべき箇所はあまりにも多い。
 場合によっては、自転車が歩道押し歩きとすべきこともあるかもしれない。
小林: 自転車乗りの行状に問題が多いのはたしかである。
 歩道を走っていて、歩行者を避けるなどのために車道へ出たとたんに逆走となることがある。
 自動車と対面したほうが安心だからと逆走する人もいる。地方によってはそれがあたりまえだったりする。
 警察官は歩道に上がれとはいうが、逆走するなとはいわない。
勝股: 歩道も狭いことが多い。すべてのトンネルに、ここは人が、自転車が通る、速度落とせ、との標示が必要かもしれない。
森山: 内法の小さなトンネルでは、大型貨物車は、車体の左上を内壁でこすることを恐れ、中央寄りを走ることがある。
 このとき、運転者の注意は対向車に向けられ、道路左側には気をつけていない。このことは意外に知られていない。
野上: 自転車の事故は、対歩行者もあるが、多くは対自動車で被害者となることが多い。
 自転車と自動車は物理的に分離されないと意味がないという方向性を強調して記述すべきではないか。
座長: 物理的分離と空間的分離という表現がある。物理的とは構造物によるものであるとしたら書きすぎであろう。
 空間的分離にはさまざまな形がありうる。自転車と自動車が重なり合わない工夫であり、厳密には書けない。
 古倉委員から欧米の事例紹介があった。米国では都市間交通政策の議論において、自転車利用者の参加が連邦法に明記されている。
野本: 小竹委員に代わり糸魚川から出てきた。自転車ライダーにとって糸魚川へ行くことは一種のステイタスであるときく。
 当地はトンネルだらけである。ネットワークはトンネルによって分断されている。
 都会の問題だけでなく、モデル化の対象にはぜひ地方も加えてほしい。
 両省庁の関係者には、くれぐれも、自転車に乗ったことのない人の机上の空論に終わらぬようお願いしたい。
 標識は外人や子供にもわかるようにする必要がある。無免許の人にも重要な情報であるから。
交通安全企画官: 小林委員から逆走についてご指摘があった。最近では5月を自転車に関する指導取締りの強化月間とした。
 平成16年からキャンペーンを行っている。重点は、車道左側通行、歩行者優先、無灯火禁止の3点に絞っている。
 今後、改正法を踏まえ、各省庁協力のもと、車道通行原則を徹底していきたい。
 小林委員と野上委員のご意見、7頁の「自転車道」に関しては、全体としては自転車道整備を第一とし、それができないときに視覚的分離などをくふうするという構成である。
小林: 自転車道を造ったとたん、現行法では、普通自転車はそこしか通行できなくなる。
 自転車道にはさまざまな自転車が混在することになり、狭いと危険である。相互通行のままとするのか、変える余地はあるか。
交通規制課長: 自転車道が道路両側にあってもそれぞれが一の車道であるから、一方通行の規制をしないかぎり、それぞれ相互通行である。
 標識や標示で誘導する方法も工夫して安全確保を図る。
座長:  自転車が問題となっているのは、歩行者の安全確保を発端としてである。しかしもちろん地方の問題も考慮しなければならない。
古倉: ドライバーに対する呼びかけが重要である。
座長: 今週月曜に北京に行った。以前は自転車が溢れて交通後進国という印象だった。しかし今回は違った。
 自転車は激減し、車道上の自転車レーンが整備され、整然と通行している。歩道上の通行などない。
勝股: 地方では高齢になって運転免許を返上するような人が自転車を利用したいのにできない。不便なバスに頼らざるを得ない。
森山: 15頁「おわりに」では、レポートの範囲からさらに踏み込みたい。
 普通自転車の定義が話題になったが、母親が子供2人以上乗せるなどあたりまえで、4人乗りなども現実にある。
 代替手段がないからである。バスも利用しにくい。ルールはわかっても、できないこともある。何らかの受け皿を提示する必要がある。
小林: 先ごろ、日本自動車工業会から提言書が出された*2。要点は次のとおり。
 1 施策のプライオリティ付けを明確にすべし。
 2 居住地域は”zone 30”として制限30km/hとすべし。
 3 歩行者・自転車・自動車の空間分離を実施すべし。
 4 安全対策予算を充実すべし。
 このように、自動車最優先の考えを見直す動きが自動車メーカーから出てきているのである。
 ところで、参考資料4 *3についてお尋ねしたい。
 歩道通行可とする基準について見直すとのことである。歩道通行可を増やす方向にか、減らす方向にか。
交通規制課長: 自転車の車道通行原則は大前提である。
 さはさりながら、自転車専用空間がベストであり、次いで、安心・安全を前提として車道通行。
 そして車道通行が危険である場合に歩道通行、という思考順序である。現場ごとの状況に応じた規制となる。
座長: 話題は尽きないが時間が押してきた。
 両省庁初めての連携しての問題提起である。実現に向け障碍もあろうが、やるべきことをここで明確にしておきたい。
 座長の希望として、今後も施策を進める過程で、機会があれば懇談会再開か同窓会かの機会を設け、現場の変化を見るなどしたい。
 委嘱期限はきょうまでではなく、懇談会が終わるまで、とされている。議事は以上。


1:47
小林: 最後に、レーン路面のカラー化について。色は全国まちまちであるから、座長に決めていただきたい。
古倉: この問題は世界中でさまざまな研究や議論があり、すぐ結論を出すのは難しい。


1:49
道路交通安全対策室長: レポートは座長と事務局に一任としたい。7月5日をめどにとりまとめ公表する予定である。
地方道・環境課長: 最終回は「シャンシャン総会」となると思いきや、活溌な議論で修正意見も多かった。
 全体のフレームは今後、社会資本整備重点計画や来年度予算概算要求に反映させていく。モデル地区は今年度着手したい。
交通規制課長: 昨年来、自転車問題について検討を重ねてきた。
 警察庁部内でも通行環境の整備を図ろうとしてきた。国交省から声かけをうけ、この懇談会に到った。
 道路整備のハード面と道路交通の指導取締りが一体化しないとうまくいかない。
 両省庁共同でやることの副次効果として、事務局でも活溌な意見交換があり、連帯が深まっている。
1:55


記者対応
座長・道路交通安全対策室長


座長: 道交法改正により自転車の車道通行原則が確認されたものの、歩道上の自転車の問題があり、自転車の通行環境整備が必要である。
 自転車を事故の被害者にも加害者にもしないために、道路空間の再配分を行う。
 レポートの表題は「これからの自転車配慮型道路における道路空間の再構築に向けて」とした。
 選択肢の広がる中で、歩行者・自転車・自動車の三者がそれぞれに安全・安心を獲得するには、という問題意識である。
 本文は1週間程度でまとめ、確定し報告する。概要は参考資料1「(骨子案)」のとおり。
 「4.自転車を考慮した道路空間の実現に向けた5つの取り組み」に関しては、
 「マル1、走行空間の原則分離の推進」は、自転車の車道通行原則が前提である。また、
 「マル5、ネットワーク計画や目標を持った税日の促進」では、自動車の速度を下げる、一方通行を拡大する、などの施策を含む。
 効率が見える形で目標、体制、手続を作ることをめざす。


問: 両省庁の具体的な動きはいつどのような形となるか。
答: 道路管理者と都道府県公安委員会に方針を示し、各地さまざまな対応となろう。
 できるところで試行を進め、モデル地区なども設ける。社会資本整備重点計画にも反映させる。
問: モデルはいつごろ具体化するか。
答: 年内にはやりたい。
問: 将来目標については。
答: 市町村単位にはたらきかけ、本当に望まれているかどうか確認する。予算がなく実現できないという例もありうる。
問: 駐輪対策の位置づけは。
答: 自転車をめぐる問題全般の半分くらいしか議論できなかった。駐輪の問題は深刻だが。
 走行環境に関するものを重点的に取り上げ、他は除いた。しかし軽視しているわけではない。