航空

航空工学の権威が出てきたところで、むりやりそっち方面へ。
kog読了文献などにつき、以前メールでお答えした内容に一部加筆再掲。


加藤寛一郎
私が読んだのは横書きの専門書ではなく、縦書きの一般書ばかりです。素人にも明快。達意の日本語。
ただし上掲5では、心なしか、かつての文体のキレがだいぶ喪われたように思いました。
90年代半ばくらいまでに一般向けに書かれた本は殆ど読んだはず。でも最近はごぶさたです。なんだか、じつは御用学者ではなかったのか、というような気がしてきて。
'85年の日航御巣鷹山事故に関して、最近になってもいろいろな疑問が出てますけど、氏は運輸省事故調査報告にとくに疑問を呈してなかったようでした。詳細未検証です。
そういえば、'94年の中華航空機事故から5年を経て、エアバスの提灯本(6)なども出してましたね。疑問を感じ始めたのはこの本が契機だったかも。


・柳田邦男
'83年の大韓航空機撃墜事件に関する緻密な検証(7)に感銘を受けました。
そういえば、'77年に新刊で読んだ「新幹線事故」(8)は、通学の電車でおもしろさのあまり下車駅を通りすごすほどでした。品川基地で、車上信号に進行現示が生じた事故は、変圧器の電界が信号電流を乱したのが原因。ずっとのちになって、国鉄内部で強電と弱電が近親憎悪的関係にあったとかという話をききました。
さらにそういえば、スリーマイル島原発事故のルポルタージュ(9)も凄かった。システムは部分最適で、起きている現実の全体像を把握することが人間の能力を超える恐怖。


・鳴海章
'90年代初頭デビューした流行作家。処女作(10)が乱歩賞受賞。
私は推理小説とか娯楽小説みたいのは殆ど読まないんですけど、この著者は別。独自の世界に引き込む筆力があります。とりわけ空中戦などの描写が物凄い。
でも最近は読んでないなあ。


・その他
そういえば、御巣鷹山事故と大韓機撃墜に関しては、市販の一般書は殆ど読み尽くしたような気がします。大韓機を撃墜したパイロットのインタビューなんかもありました。
他にも、現代の軍用機などに関して、こぐ書庫を探せばいろいろ出てくるかも。
自衛隊パイロットの手記も何冊か読みましたが、詳細憶えてません。


というわけで、個別書評はこぐ書庫を探索しながらになりそうです。


6 加藤寛一郎エアバスの真実―ボーイングを超えたハイテク操縦」講談社、1999年。ISBN:4062095572
 講談社プラスアルファ文庫、2002年。ISBN:4062566346
7 柳田邦男「撃墜―大韓航空機事件」講談社1984年。上 ISBN:4062009471 下 ISBN:4062011972
 講談社文庫、講談社、1991年。上 ISBN:406184976X 中 ISBN:4061849778ISBN:4061849786
8 柳田邦男「新幹線事故」中公新書中央公論新社、1977年。ISBN:4121004612
9 柳田邦男「恐怖の2時間18分」文芸春秋、1983年。ISBN:4163379800
 文春文庫、文芸春秋、1986年。ISBN:416724005X
10 鳴海章「ナイト・ダンサー」講談社、1991年。ISBN:4062055783
  講談社文庫、講談社、1994年。ISBN:4061857231
6 エアバスの真実―ボーイングを超えたハイテク操縦 10 ナイト・ダンサー (講談社文庫)