駐車監視員資格者講習の要点

前掲書は、以下の構成と枠内引用にみられるとおり、改正道路交通法による駐車取締のしくみについて正確に理解し、それを適正に行うための一助として役立つものと思います。


1.1.1 拡大を続ける道路交通の現状

(略)自動車交通量の増大は、国民のだれもが交通事故の被害に遭う危険性を増大させるほか、違法駐車、交通渋滞、交通騒音などの問題を慢性化させ、さらには二酸化炭素の排出による地球温暖化問題、大気汚染などの環境問題を引き起こすなど、様々な社会問題の原因ともなっています。


1.1.3 駐車問題の現状

 違法駐車は、都市部を中心に常態化しており、交通渋滞や交通事故の原因となるほか、緊急時における救急車、消防車などの緊急車両の通行を妨げ、ゴミ収集作業、地域によっては除雪作業の妨害となるなど、国民一人ひとりの生活に著しい弊害をもたらしている(略)

(略)駐車関係110番通報の数が増加していることにもみられるように、違法駐車問題は依然として解決していない深刻な都市問題の一つとして国民に受け止められています。


1.3.1 警察の中の交通警察
警察法 第2条第1項 警察は、個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の予防、鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕、交通の取締その他公共の安全と秩序の維持に当ることをもつてその責務とする。


1.3.2 交通警察の目的と主な活動

交通安全教育(Education)
交通工学的手法(Engineering)
交通指導取締り(Enforcement)


1.3.3 道路交通法の目的と主な内容
道路交通法(以下「法」。) 第1条 この法律は、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、及び道路の交通に起因する障害の防止に資することを目的とする。


2.1.1 運転者責任の追及

 駐車違反をした運転者には罰金が科せられます。ただし、駐車違反には交通反則通告制度が適用されますので、警察官又は交通巡視員(略)による告知、警視総監又は道府県警察本部長の通告が行われた場合において、運転者がこれに基づき反則金を納付したときには、公訴の提起や付審判が行われないことになります。

 警察官等は、駐車違反をした運転者があると認めるときは、違反事実の要旨、違反種別、通告を受けるための出頭すべき日時・場所を書面(告知書)で告知します。この告知書は、交通反則切符、いわゆる青切符とよばれるものです。


2.1.2 違法駐車車両の運転者などに対する移動命令

 車両の使用者とは、「車両を使用する権原を有し、車両の運行を支配・管理する者であり、車両の運行について最終的な決定権を有する者」のことをいいます。


2.2.2 確認事務の民間委託
法第51条の8第1項(未施行) 警察署長は、第51条の4第1項に規定する放置車両の確認及び標章の取付け(以下「放置車両の確認等」という。)に関する事務(以下「確認事務」という。)の全部又は一部を、公安委員会の登録を受けた法人に委託することができる。
第51条の12第1項(未施行) 警察署長は、第51条の8第1項の規定により確認事務を委託したときは、その受託者(以下「放置車両確認機関」という。)の名称及び主たる事務所の所在地その他政令で定める事項を公示しなければならない。


2.3.1 駐車監視員の仕事
法第51条の12第3項(未施行) 放置車両確認機関は、次条第1項の駐車監視員資格者証の交付を受けている者のうちから選任した駐車監視員以外の者に放置車両の確認等を行わせてはならない。

 駐車監視員の活動の中心となるのは、地域を巡回し、現場において放置車両を確認し、確認標章を取り付ける作業ですが(略)、このほか、巡回中において、違反しようとしている運転者を発見した場合に警告したり、ナンバープレートが取り付けられていない車両、明らかに廃棄されていると認められる車両などを発見した場合に警察官に報告したりする活動を行うことが考えられます。委託を受けた放置車両確認機関において駐車監視員が実際に行う活動の詳細は、委託契約書や仕様書により定められることとなります。


2.3.2 駐車監視員資格者証制度
第51条の13第2項(未施行) 公安委員会は、駐車監視員資格者証の交付を受けた者が次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、その者に係る駐車監視員資格者証の返納を命ずることができる。
 同項第1号 第51条の8第3項第2号イからヘまでのいずれかに該当するに至つたとき。
 同項第2号 偽りその他不正の手段により駐車監視員資格者証の交付を受けたとき。
 同項第3号 前条第5項の規定に違反し、又は放置車両の確認等に関し不正な行為をし、その情状が駐車監視員として不適当であると認められるとき。
第51条の12第5項(未施行) 駐車監視員は、放置車両の確認等を行うときは、次条第1項の駐車監視員資格者証を携帯し、警察官等から提示を求められたときは、これを提示しなければならない。

(略)警察官等以外の者、例えば確認した放置車両の運転者などから提示を求められた場合には、駐車監視員資格者証を提示する義務はありません。これは、駐車監視員は記章・制服の着用により外観から駐車監視員であると分かること、警察官以外の者に対しても提示しなければならないとすれば駐車監視員の事務の遂行に支障を来すことが予想されることによるものです。


3.1.1 道路とは
法第2条第1項 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
 同項第1号 道路 道路法(略)第2条第1項に規定する道路、道路運送法(略)第2条第8項に規定する自動車道及び一般交通の用に供するその他の場所をいう。
道路法 第2条第1項 この法律において「道路」とは、一般交通の用に供する道で次条各号に掲げるものをいい、トンネル、橋、渡船施設、道路用エレベーター等道路と一体となつてその効用を全うする施設又は工作物及び道路の附属物で当該道路に附属して設けられているものを含むものとする。

ただし、私道や私有地については、その所有者や管理者がこれらの場所を閉鎖したときは、ここにいう道路ではなくなります。


3.2 車両の基礎知識
法第2条第1項第8号 車両 自動車、原動機付自転車、軽車両及びトロリーバスをいう。
法第50条の2 車両(トロリーバスを除く。以下第51条の2まで及び第51条の4において同じ。)が第44条、第47条第1項若しくは第3項又は第48条の規定に違反して停車していると認められるときは、警察官等は、当該車両の運転者に対し、当該車両の停車の方法を変更し、又は当該車両を当該停車が禁止されている場所から移動すべきことを命ずることができる。
法第51条の4第1項(未施行) (略)違法駐車と認められる場合における車両(軽車両にあつては、牽引されるための構造及び装置を有し、かつ、車両総重量(道路運送車両法第40条第3号の車両総重量をいう。)が七百五十キログラムを超えるもの(以下「重被牽引車」という。)に限る。以下この条において同じ。)(略)


3.2.4 ナンバープレートの基礎知識(略・重要)


3.3.2 交通規制の効力発生要件

公安委員会などの意思決定があること
信号機又は道路標識・道路標示が適法に設置されていること


3.3.3 交通規制の方法

区域規制(面の規制)
区間規制(線の規制)
場所規制(点の規制)

補助標識(略・重要)

 
4.1 放置車両とは
法第51条の4第1項(未施行) 違法駐車と認められる場合における車両(軽車両にあつては、(略)重被牽引車(略)に限る。(略))であつて、その運転者がこれを離れて直ちに運転することができない状態にあるもの(以下「放置車両」という。)


4.1.1 駐車とは
法第2条第1項第18号 駐車 車両等が客待ち、荷待ち、貨物の積卸し、故障その他の理由により継続的に停止すること(貨物の積卸しのための停止で五分を超えない時間内のもの及び人の乗降のための停止を除く。)、又は車両等が停止し、かつ、当該車両等の運転をする者(以下「運転者」という。)がその車両等を離れて直ちに運転することができない状態にあることをいう。


4.1.2 「運転者がその車両を離れて直ちに運転することができない状態」とは

(略)何分間停止していたかという停止時間の長短は問いません。
(略)車両から離れていて直ちに運転することができない状態にあると認められれば、離れた距離の遠近、エンジンを止めているか否か、ハザードランプを点けているか否かなどを問いません。


4.1.3 「違法駐車と認められる場合における車両」とは
法第51条第1項(一部未施行)
車両が
第44条、第45条第1項若しくは第2項、第47条第2項若しくは第3項、第48条若しくは第49条の2第2項、第3項若しくは第5項後段の規定に違反して駐車していると認められるとき、又は
第49条第2項のパーキング・チケット発給設備を設置する時間制限駐車区間において駐車している場合において当該車両に当該パーキング・チケット発給設備により発給を受けたパーキング・チケットが掲示されておらず、かつ、第49条の2第4項の規定に違反していると認められるとき
(次条第1項及び第51条の4第1項において「違法駐車と認められる場合」と総称する。)


4.2.1 駐停車禁止場所違反
法第44条 車両は、道路標識等により停車及び駐車が禁止されている道路の部分及び次に掲げるその他の道路の部分においては、法令の規定若しくは警察官の命令により、又は危険を防止するため一時停止する場合のほか、停車し、又は駐車してはならない。ただし、乗合自動車又はトロリーバスが、その属する運行系統に係る停留所又は停留場において、乗客の乗降のため停車するとき、又は運行時間を調整するため駐車するときは、この限りでない。
 同項第1号 交差点、横断歩道、自転車横断帯、踏切、軌道敷内、坂の頂上付近、勾配の急な坂又はトンネル
 同項第2号 交差点の側端又は道路のまがりかどから五メートル以内の部分
 同項第3号 横断歩道又は自転車横断帯の前後の側端からそれぞれ前後に五メートル以内の部分
 同項第4号 安全地帯が設けられている道路の当該安全地帯の左側の部分及び当該部分の前後の側端からそれぞれ前後に十メートル以内の部分
 同項第5号 乗合自動車の停留所又はトロリーバス若しくは路面電車の停留場を表示する標示柱又は標示板が設けられている位置から十メートル以内の部分(当該停留所又は停留場に係る運行系統に属する乗合自動車、トロリーバス又は路面電車の運行時間中に限る。)
 同項第6号 踏切の前後の側端からそれぞれ前後に十メートル以内の部分
法第2条第1項第4号 横断歩道 道路標識又は道路標示(以下「道路標識等」という。)により歩行者の横断の用に供するための場所であることが示されている道路の部分をいう。
法第46条 車両は、第44条又は前条第1項の規定による停車及び駐車を禁止する道路の部分又は駐車を禁止する道路の部分の一部について、道路標識等により停車又は駐車をすることができることとされているときは、これらの規定にかかわらず、停車し、又は駐車することができる。


4.2.2 駐車禁止場所違反
法第45条第1項 車両は、道路標識等により駐車が禁止されている道路の部分及び次に掲げるその他の道路の部分においては、駐車してはならない。ただし、公安委員会の定めるところにより警察署長の許可を受けたときは、この限りでない。
 同項第1号 人の乗降、貨物の積卸し、駐車又は自動車の格納若しくは修理のため道路外に設けられた施設又は場所の道路に接する自動車用の出入口から三メートル以内の部分
 同項第2号 道路工事が行なわれている場合における当該工事区域の側端から五メートル以内の部分
 同項第3号 消防用機械器具の置場若しくは消防用防火水槽の側端又はこれらの道路に接する出入口から五メートル以内の部分
 同項第4号 消火栓、指定消防水利の標識が設けられている位置又は消防用防火水槽の吸水口若しくは吸管投入孔から五メートル以内の部分
 同項第5号 火災報知機から一メートル以内の部分


4.2.3 無余地場所違反
法第45条第2項 車両は、第47条第2項又は第3項の規定により駐車する場合に当該車両の右側の道路上に三・五メートル(道路標識等により距離が指定されているときは、その距離)以上の余地がないこととなる場所においては、駐車してはならない。ただし、貨物の積卸しを行なう場合で運転者がその車両を離れないとき、若しくは運転者がその車両を離れたが直ちに運転に従事することができる状態にあるとき、又は傷病者の救護のためやむを得ないときは、この限りでない。


4.2.4 駐車方法違反
法第47条第2項 車両は、駐車するときは、道路の左側端に沿い、かつ、他の交通の妨害とならないようにしなければならない。
同条第3項 車両は、車道の左側端に接して路側帯(当該路側帯における停車及び駐車を禁止することを表示する道路標示によつて区画されたもの及び政令で定めるものを除く。)が設けられている場所において、停車し、又は駐車するときは、前2項の規定にかかわらず、政令で定めるところにより、当該路側帯に入り、かつ、他の交通の妨害とならないようにしなければならない。
道路標識、区画線及び道路標示に関する命令
第9条 道路標示の種類、設置場所等は、別表第5のとおりとする。
第10条 道路標示の様式は、別表第6のとおりとする。
別表第5 規制標示
 種類/番号/表示する意味/設置場所
 路側帯/(108)/交通法第2条第1項第3号の4に規定する路側帯であること。/路側帯を設ける道路の区間
 駐車禁止路側帯/(108の2)/交通法第2条第1項第3号の4及び第47条第3項の道路標示により、路側帯における車両の駐車及び停車を禁止すること。/路側帯における車両の駐車及び停車を禁止する道路の区間
 歩行者用路側帯/(108の3)/交通法第2条第1項第3号の4、第17条の2第1項及び第47条第3項の道路標示により、路側帯における軽車両の通行並びに車両の駐車及び停車を禁止すること。/路側帯における軽車両の通行並びに車両の駐車及び停車を禁止する道路の区間
別表第6(略・重要)
道路交通法施行令 第14条の5第1項 法第47条第3項の政令で定めるものは、歩行者の通行の用に供する路側帯で、幅員が〇・七五メートル以下のものとする。
同条第2項 車両は、路側帯に入つて停車し、又は駐車するときは、次の各号に掲げる区分に従い、それぞれ当該各号に定める方法によらなければならない。
 同項第1号 歩行者の通行の用に供する路側帯に入つて停車し、又は駐車する場合 当該路側帯を区画している道路標示と平行になり、かつ、当該車両の左側に歩行者の通行の用に供するため〇・七五メートルの余地をとること。この場合において、当該路側帯に当該車両の全部が入つた場合においてもその左側に〇・七五メートルをこえる余地をとることができるときは、当該道路標示に沿うこと。
 同項第2号 歩行者の通行の用に供しない路側帯に入つて停車し、又は駐車する場合 当該路側帯の左側端に沿うこと。


4.2.5 時間制限駐車区間での違反
法第49条の2第2項 車両は、時間制限駐車区間においては、当該駐車につき前条第1項のパーキング・メーターが車両を感知した時又は同条第2項のパーキング・チケット発給設備によりパーキング・チケットの発給を受けた時から、それぞれ道路標識等により表示されている時間を超えて引き続き駐車してはならない。


5.1.1 携帯端末を用いた放置車両の確認と確認標章の作成・取付け

 道路標識・道路標示が設置されているか、時間規制の場合は規制時間内かどうかなどを確認します。このとき、車両や曜日を指定して規制対象から除いている場合などがあるので、補助標識の内容も必ず確認します。

 駐車違反が成立している場合、それが「放置駐車違反」であることを確認するため、まず、車両内に運転者がいないことを確認し、車両内に運転者がいる場合は、車両を移動させるよう申し向けます。
 さらに、車両内に運転者がいない場合は、車両真近に運転者と思われる者がいる場合は、その者に対して車両の運転者かどうかを確かめ、運転者であれば車両を移動させるよう申し向けます。


5.1.2 受傷事故防止

 駐車監視員が放置車両の確認事務を行う現場は、交通の頻繁な道路上であり、常に交通事故の危険にさらされている場所です。駐車監視員は、そのことを自覚し、必要以上に車道に出ないなど事故に遭わないよう気を付けなければなりません。


5.2 違反種別ごとの違反態様入力事項と確認時の留意事項(略・重要)


6.1 秘密保持義務
法第51条の12第6項(未施行) 放置車両確認機関の役員若しくは職員(駐車監視員を含む。次項において同じ。)又はこれらの職にあつた者は、確認事務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。
法第117条の4 次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
 同条第1号(未施行) 第51条の12(放置車両確認機関)第6項又は第51条の15(放置違反金関係事務の委託)第2項の規定に違反した者


6.2 みなし公務員制度
法第51条の12第7項(未施行) 確認事務に従事する放置車両確認機関の役員又は職員は、刑法その他の罰則の適用に関しては、法令により公務に従事する職員とみなす。

(略)放置車両確認機関の役職員は、収賄罪や虚偽公文書作成罪などの主体となり、例えば、確認事務に関して賄賂を受け取った場合には収賄罪で、虚偽の確認標章を作成した場合には虚偽公文書作成罪で、それぞれ罰せられます。また、公務執行妨害罪や職務強要罪などの客体となり、例えば、確認事務中に暴行を受けた場合には、暴行を加えた者が公務執行妨害罪で罰せられます。