似て非なる

過日入手の古時計に関して、斯界の権威から言及がありました*1
わが376.0822 *2は米国航空宇宙局装備品と似た外観ですが、搭載の機械は全く異なるものです。異端にして私の実用目的に適す。


関連文献を少々。
下掲1によると、'60年代のジェミニ計画進行中、装備担当者がヒューストン市街の小売店で腕時計を数種購入、苛酷な試験を実施して唯一残ったのが"Speedmaster"で、船外活動で宇宙空間中に曝されても、真空や温度差や紫外線などに耐えたとのこと。
2は大冊で画像が豊富。
3には、米国海軍戦略原潜"Ohio"の刻印のある376.0822が紹介されています。
いずれも斯界では夙に知られた文献です。
1オメガスピードマスターマスターブック (グリーンアロー・グラフィティ) 220世紀の記憶装置―オメガ・スピードマスター (ワールド・ムック (100)) 3世界の軍用時計 (ワールド・ムック―世界の傑作品 (491))
1 今井今朝春 編「オメガスピードマスター マスターブック」グリーンアロー・グラフィティ〈49〉、グリーンアロー出版社、1999年。ISBN:4766332954
2 同「オメガ・スピ−ドマスタ− 20世紀の記憶装置」ワ−ルド・ムック、ワ−ルドフォトプレス、1997年。ISBN:4846521001
3 「世界の軍用時計」同、同、2004年。ISBN:4846524914


月に行った唯一の時計として歴史に名をとどめる"Speedmaster"は、初版以来半世紀近くにわたって大きく形を変えることなく市販が続いています。
宇宙空間での使用に耐えることを目的としてその機能・性能が開発されたわけではありません。
機能美というより造形美というべきその意匠は、人為淘汰によって洗練されてきたわけでもなさそうです。いづくよりきたりしものぞ。