底力

ロン=ハワード監督作品「アポロ13」。
アポロ13 [DVD]
時計への興味もあって再び鑑賞しました。
あゆこさんの薦めにより、封切映画館でいっしょに見たのがもう10年前ですか。婚約前だったっけ?


'70年4月、人類3度目の月着陸を目指すアポロ13号が宇宙空間で酸素タンク爆発事故に見舞われ、生還を果たす過程を描いた作品です。
最初に見たときの漠然とした退屈さが信じられぬほど面白いのは何故でせう。殆どが史実に基づくものでありながら。
演出はあるにせよ、史実を枉げることなく娯楽作品として仕上げるのは容易ではなかったのではと思います。


腕時計が最も明確にあらわれるのは、飛行士が宇宙服を着せられる場面。
長いストラップの"Speedmaster"が宇宙服の腕に巻かれます。


付録ディスクには、映画出演者やラベル船長はじめ当時の関係者のインタビューなどを収めた番組があって、さながら「プロジェクトX」のような感じでした。
いろいろ面白い逸話も紹介されています。
映画のロケット打ち上げシーンを見た当時の飛行士が、あんな迫力ある映像をNASAは隠してたんだな、ともらしたそうですが、じつは模型やCGでつくりあげたものだったとか。
船長夫人マリリンがシャワーを浴びながら指輪を流してしまう凶兆は出来すぎと評されたが、事実だったとか。
事故の直接の契機となった酸素タンク攪拌操作に関し、地上からの指示でスヰッチを入れた飛行士と他の飛行士との間で口論となる場面は、映画を面白くするためのつくりごとであるとか。史実に反するのはそれぐらいとか。
あと何十年かたって当時を知る者がいなくなったとき、アポロ計画が如何なるものであったかを知らしむるためにも映像を残しておく価値がある、この映画をつくる意義はそんなところにもあったし、それに値する出来ばえであるとか。
ラベル船長その人も、映画に端役で出演してるとか。さて何の役でせう?


アポロ計画って、今から考えると、というか今考えてもとてつもないものでしたね。
初の有人宇宙飛行から10年を経ずして月面着陸を達成しえたのは米国の底力というか。
米ソ軍拡競争を背景として、ケネディ大統領の錦の御旗ゆえにこそという側面もあるかもしれませんが。
徹底したシミュレーション、危機管理、意思決定手法など、多くの分野で学ぶべきことも多いのでは。


思えば、小学校2年だか3年だかで読んだ下掲書が印象的でした。
月面を背景に着陸船から司令船を撮った写真が表紙で、これを長い間、支援船の後方からの姿とばかり思ってました。
初の月面周回を果たしたアポロ8号のミッションが詳述されていました。スヌーピーとチャーリーブラウンとはそれぞれアポロ10号の着陸船・指令船の愛称で、それが米国で有名な漫画主人公であると初めて知ったのでした。11号の月着陸の話は殆ど印象にないので、刊行はもしかしたら月着陸前だったかもしれません。
アポロ計画の立役者ヴェルナー=フォン=ブラウンがナチスのミサイル開発に従事していたころのことも紹介され、アドルフ=ヒトラーという人物の存在を知ったのもこの本ででした。


日下実男「月へいくアポロ宇宙船 宇宙の神秘をひらく驚異の記録」
少年少女ドキュメンタリ−、偕成社、初版不詳、現行版1981年。ISBN:4037120100