殺す側と殺される側

近ごろ朝の電車で座っても眠れぬことしばしば。
いつだか前に立ったおじさんが"Herald Tribune"など読んでて、でもよくみたら漢字で「第三種郵便物認可」の文字があったりして。
で、広告らしき面に沙漠に立つ兵士の画と"JARHEAD"の文字。どうやら映画化されたらしい。
9ジャーヘッド-アメリカ海兵隊員の告白
9 スオフォード、アンソニージャーヘッド-アメリ海兵隊員の告白」中谷和男 訳、アスペクト、2003年。ISBN:475720972X
 (Swofford, Anthony"JARHEAD : A MARINE'S CHRONICLE OF THE GULF WAR AND OTHER BATTLES")
新刊で読んだときは、なんだか露悪趣味みたいでなじめませんでした。それ以前に読んでた特殊部隊モノに淡々とした記録が多かったということをさしひいても。
ただそれゆえ本書がとりわけブンガク的だという人もいるのかな。映画ではどうなってるでしょう。


先立つ文献はたとえば次のようなものです。いずれも当事者の体験記で一読の価値あり。
4ブラヴォー・ツー・ゼロ―SAS兵士が語る湾岸戦争の壮絶な記録 (ハヤカワ文庫NF) 5SAS戦闘員―最強の対テロ・特殊部隊の極秘記録〈上〉 (ハヤカワ文庫NF)SAS戦闘員―最強の対テロ・特殊部隊の極秘記録〈下〉 (ハヤカワ文庫NF) 6SAS特殊任務 7対テロ部隊HRT―FBI精鋭人質救出チームのすべて 8地上最強のアメリカ陸軍特殊部隊―わずか1000人のエリート戦士が戦争を決める (講談社プラスアルファ文庫)
4 マクナブ、アンディ「ブラヴォー・ツー・ゼロ-SAS兵士が語る湾岸戦争の壮絶な記録」伏見威蕃 訳、早川書房、1995年。
 ハヤカワ文庫NF、早川書房、2000年。ISBN:4150502420
 (McNab, Andy"BRAVO TWO ZERO")
5 マクナブ、アンディ「SAS戦闘員-最強の対テロ・特殊部隊の極秘記録」伏見威蕃 訳、早川書房、1997年。
 ハヤカワ文庫NF、早川書房、2000年。上巻 ISBN:4150502390 下巻 ISBN:4150502404
 (McNab, Andy"IMMEDIATE ACTION")
6 ハンター、ギャズ「SAS特殊任務-対革命戦ウィング副指揮官の戦闘記録」村上和久 訳、並木書房、2000年。ISBN:4890631291
 (Hunter, Gaz"THE SHOOTING GALLERY")
7 ウィットコム、クリストファー「対テロ部隊HRT-FBI精鋭人質救出チームのすべて」伏見威蕃 訳、早川書房、2003年。ISBN:4152084995
 (Whitcomb, Christopher"COLD ZERO : Inside the FBI Hostage Rescue Team")
8 三島瑞穂「地上最強のアメリカ陸軍特殊部隊-わずか1000人のエリート戦士が戦争を決める」講談社プラスアルファ文庫、講談社、2003年。
 ISBN:4062567466


さらに先立つもの。
bブラックホーク・ダウン [DVD] a(DVD版)西部戦線異状なし [DVD] 2強襲部隊―米最強スペシャル・フォースの戦闘記録
b リドリー・スコット監督"Black Hawk down"
a ルイス・マイルストン監督「西部戦線異状なし
1 レマルク、エーリヒ・マリア「西部戦線異状なし秦豊吉訳、初版不詳。新潮文庫、新潮社、現行版1983年。ISBN:4102125019
 (Remarque, Erich Maria"IM WESTEN NICHTS NEUES")
2 ボウデン、マーク「強襲部隊-米最強スペシャル・フォースの戦闘記録」伏見威蕃 訳、早川書房、1999年。ISBN:4152082569
 (Bowden, Mark"BLACK HAWK DOWN")


このへんに関して、以前かぜはるかさんの掲示板に投稿してました。

No. 3003 time: Thu Mar 13 03:04:13 JST 2003
(略)
先週末、"Black Hawk down"という映画を観ました。
'93年10月ソマリア。27時間の戦闘で、死者は米軍19名、ソマリ族1000名以上不詳。
戦争で人が傷ついたり死んだりするとはどういうことなのか、写実的な描写で、現実を想像する契機を与えてくれました。


反戦、非戦を唱えればすべてが解決されるほど世の中は単純ではないのでしょうけれど。
小学校のころは、なぜか戦火に焼かれ逃げ惑う夢をよくみたものでした。

No. 3033 time: Wed Mar 19 01:55:58 JST 2003
(略)
日曜は「西部戦線異状なし」を見ました。1930年アメリカ映画。
小学生の頃、テレビで断片的に見た印象が強烈でした。
レマルクの原作"Im Westen Nichts neues"の邦訳を読んだのは高校2年。


この原作のことを思い出したのは、"Black Hawk down"を見たときでした。
レマルクは「訴えでもなければ告白でもない」といいます。
そこにあるのは兵士の戦う戦争という現実。
兵士が殺しあい傷つき死ぬとはどういうことか。


"Black Hawk down"からまず伝わってくるのはこの現実のどうにもやりきれない重さだと思います。
米兵の現実。ソマリ族の現実ではありません。

No. 3105 time: Thu Apr 24 02:03:59 JST 2003
(略)
ところで、英国陸軍の精鋭特殊部隊員に求められる資質のひとつに「ユーモア」があるそうです。
あったほうがよいのではなく、不可欠だそうです。
ねばり強さ、創造力と知能、団体精神、自制心と並んで。

No. 3109 time: Sat Apr 26 00:43:54 JST 2003
(略)
まず、特殊部隊への選抜候補者の能力とユーモアセンスの間に相関関係があるという経験則のようです。
まあ、蛇を捕まえて食べたりとか、1日中泥水に漬かっていたりとか、90kgの装備を背負って敵地を一晩で40km歩いたりとか、状況を対象化して笑いとばしでもしなければとてもやってらんないということでしょうか。


指揮官の資質では、守備隊よりも攻撃隊のほうがユーモアセンスが重要だそうで。これはなぜでしょうね。


現在下掲書講読中。
混乱と軋轢の下で目的を達するための自らの精神力と組織統率力について、怠惰な私にとって学ぶべき点が多くあるような気がします。


McNab, Chris ”ENDURANCE TECHNIQUES” Amber Books Ltd, London, 2001.
マクナブ,クリス 「SAS・特殊部隊 知的戦闘マニュアル―勝つためのメンタルトレーニング」
小路浩史訳、原書房、2002年。ISBN:4562034742

3 上掲書
SAS・特殊部隊 知的戦闘マニュアル―勝つためのメンタルトレーニング