「新たな自転車利用環境のあり方を考える懇談会」第2回傍聴記

6/11開催。同日付に画像及び第1回傍聴記掲載。


第2回議場で開会前に配付された「(素案)」一読、第1回議事の極端なホネヌキではないことに少々安堵。
しかし、決定的に欠けている点2つあり。
第一に、自動車のふるまいをどうするかについて。
自転車にとって安全な車道なしに、歩行者にとって安全な歩道は成り立つまい。
第二に、自転車走行空間を乗り手の選択に委ねうることについて。
経験や能力があり車道を高速走行するのに適した者とそうでない者が一律に自転車として他の交通から分離され専用空間に閉じ込められるようなことになっては、自転車交通の安全も円滑も著しく損なわれることになろう。


この2点を落とすことがなければ、懇談会のまとめる「提言」は、それなりに見識を反映したものとなりそうです。
さて、第2回の議事や如何に。以下、議場での鉛筆書きメモから再現。文責kog。


第2回 新たな自転車利用環境のあり方を考える懇談会


日時:平成19年6月11日(月) 10:30〜12:30
場所:中央合同庁舎 2号館低層棟 共用会議室3A


懇談会メンバー
座長 屋井 鉄雄   東京工業大学大学院 総合理工学研究科教授
副座長 久保田 尚  埼玉大学 工学部教授
  片山 右京   レーシングドライバー
  勝股美代子   消費生活アドバイザー
  古倉 宗治   財団法人 土地総合研究所 理事
  小林 成基   NPO法人 自転車活用推進研究会 事務局長
  関  一    財団法人 全日本交通安全協会 常務理事
  森山 みずほ  モータージャーナリスト
欠席
  小竹 一枝   NPO法人 女性みちみらい上越 理事


その他出席者
  国土交通省 下保 地方道・環境課長 / 後藤 道路交通安全対策室長
  警察庁  太田 交通規制課長 / 早川 交通企画課交通安全企画官
  事務局


0:00(経過時間、以下同。)
座長: 遅刻申訳ない。本日は小竹委員欠席である。
事務局:  資料第1回の議事を反映している。
 懇談会の結果は「提言」ではなく「レポート」とする。
 資料1〜4について事務局から、参考資料2「車道と歩道の安全性の比較」について古倉委員からそれぞれ説明する。
0:24


古倉:  参考資料2「車道と歩道の安全性の比較」について。前回は過激な発言をしたので少々まとめる。
 まず、近年の自転車事故数をみると、欧州では6-7割、米国では3-4割の減である。この各国は自転車の車道通行が原則である。
 他方、歩道通行を容認している日本では、ほぼ横這いか微減程度にとどまる。
 留意すべきは、第一に、各国とも事故のパターンは類似していること。
 第二に、自動車から自転車の視認性がだいじであること。
 第三に、歩道・車道のどちらを中心におくかに彼我の違いがあること。
 自転車専用空間は先進といわれるオランダの都市部でも13%とそれほど多くない。
0:39


事務局: 参考資料1、3〜5について説明する。
1:06


片山: 自転車といってひとくくりにするのに無理がある。
 近年は競技車が売れている。彼らは意識が高く、安全行動をとり、長距離を高速で移動する。
 自転車専用の走行空間といっても、対面交通や速度差をどうするかという問題がある。
 教育だけでなく取締りや罰則も必要である。右側通行の自転車には日ごろ私も腹がたっている。
 大井埠頭には休日には数百から千という数の競技自転車が集まる。
 競技自転車では、素人がちょっと真似したくらいがあぶない。先日の佐渡島ロングライドなどでの負傷者は初心者だった。
座長: 競技車は車道を高速で走り、歩道通行に戸惑いがある。歩道に押し込めるのは問題があるのではないか。
片山: インフラを100%整備できるわけではない。モータースポーツならサーキットに行って走るという行動もとられる。
 自転車は通勤などにも使われる。現在のスポーツ車販売の好調が3-5年後に重要な問題になってくる。
 歩道内ルールも徹底する必要がある。
勝股: 逆の立場、歩行者側から申し上げたい。正式に自転車が歩道に上がってくるという不安感をどうレポートに盛り込むか。
 高齢者は腰が曲がって下しか見えない。車椅子の通行もある。生活者にやさしい道路づくりという基本コンセプトが必要である。
小林: 弱者優先が徹底されていないのが実情である。
 車道上では左側通行が原則なのに、歩道はそうではない。自転車が右側の歩道を通行していて車道へ逃げたら危険である。
 歩道上の自転車相互通行の見直しも必要である。
 これに関連して、第一に、自転車のマナーが悪いのは確かだが、自動車運転者が自転車が車両であることを知らない。
 免許を持っているはずなのに、自転車は歩道通行が当たり前と思っている人が大半である。
 このような人に免許を与えてはいけない。自転車のことは試験にも出ないし、教習できちんと学んでいない。
 ドライバーが知っていて当たり前のはずが知られていないのが問題である。
 第二に、都内でも幅1m弱の歩道で自転車通行可とされているところを多く見かける。
 警察庁にお願いであるが、歩道に自転車通行可の指定をする際の公安委員会の基準を示していただきたい。
森山: 資料3「(骨子)」に歩行者・自転車それぞれの立場でのユーザー調査のような内容が必要かと思う。
 たとえば、自転車通行可の標識など高い位置にあると目に入らない。
 あるいは、自転車は地図を見ながら走ったりしないから、案内標識で誘導する方法もある。
 自治体などとユーザーとの連携があってもよい。


座長: 事務局側から何か。
交通安全企画官: ルール遵守といっても、ルールが十分に知られていないのが実情である。
 自転車の車道通行の原則、歩行者優先など、いろんな手段を用いて徹底していきたい。 安全教育に加え、街頭でのボランティア活動も効果的であろう。
 ドライバー教育の不足については、言訳めくが、免許更新時講習ビデオに自転車の要素をとりいれたところである。
交通規制課長: 歩道の自転車通行可の指定は基準が通達の形で出されている。
 歩道の幅2m以上が原則である。自転車通行部分指定を行う場合は4m以上。
 あくまで通行可という指定であって、通行すべしという命令ではない。
 車道での事故が多いところでは、多少無理してでも歩道通行可とする傾向があるようである。
 警察庁としては原則に準拠しつつ、指定の妥当性について検証する必要があると考え、改めて全国に調査指示を出した。
 標識の効果的なあり方についても模索したい。
 現在、改正道交法について国会審議中である*1。施行まで1年ほどあるので、その間に具体策の検討を進める。
小林: 自転車通行可指定の基準について、紙に書かれたものがあるのか。
交通規制課長: 通達として存在する。改訂が頻繁なので公表していない。行政文書開示請求があれば開示することになると思う。*2
勝股: 自転車と歩行者の事故では、自転車が逃走する例が多いのではないか。
その場合、警察に訴えてもしかたない、加害者が捕まらないと泣き寝入りになってしまう。監視カメラなど活用してはどうか。


古倉:  資料3「(骨子)」、「3つの柱」の「自転車の通行環境の整備」には、自転車・歩行者双方にとって快適な、という要素を欠かせない。
 「整備目標の設定」では、ハードをどれだけ造ったなどというだけでなく、自転車の利用率・分担率といった指標も必要。
 「その他の留意事項」として管理の問題がある。自転車道を造ったはよいが、維持整備が不適切で雑草が繁茂するような例もある。
 利用度調査により、なぜ使われないかを把握し、それをフィードバックしてバージョンアップに役立てることも考えたい。
 資料4「素案」8頁、駐輪対策について。駐輪場を植込みで囲うなど、景観に配慮という要素もとりいれたい。 
 同10頁、ネットワークは安全だけでなく、快適さも確保せねばならない。自転車・歩行者双方にとって。


地方道・環境課長: 森山委員の意見について。調査に関し、書けるものは書きたい。それぞれがパートナーシップの当事者として。
 それぞれの要望も、我慢すべきことについても。どこにでも共通する留意点などは全国へ展開したい。
 古倉委員の意見について。分担率は情けないことに現状でさえ把握できていない。整備目標は国が主導で策定したい。
 維持管理についてはPlan-Do-Check-Actionというサイクルを回すことが基本である。
 景観に関しては設備の設置基準などでも第一に掲げられるようになってきている。


関: 「(骨子)」について。現実に自転車がどの程度使われているかという指標が自転車道整備目標策定に必要である。
 「3つの柱」では、「自転車の通行環境の整備」と「ビジョンを持った整備の促進」は一体のものではないか。
 「自転車の通行ルールの周知徹底」はこれらに比し重要性が少々落ちる。環境整備がルール遵守につながると考えるべきではないか。
小林: 第一に、自転車専用道は町中には要らない。川沿いや郊外は別として。
 町中では道路を車両どうしでシェアできるはずだからである。
 独立した自転車道を走る自転車は交叉点で突然姿をあらわすので危険である。
 車道単路では自転車が自動車運転者の目や鏡に見えているかぎり危険は少ない。
 第二に、標識について。自転車乗りは下しかみていないこともある。
 標識の掲出のしかたによっては頭を打つ危険もある。やはり路面に描くのがよい。
 第三に、監視カメラについて。プライバシーの問題もあるが、Nシステム自治体のもの、コンビニなど、多岐に存在する。
 カメラがあるぞというのが抑止力になる。隠しカメラは証拠能力にも限界があろう。
 壊そうとする者がいたとしても、隠すよりは抑止力をもたせるのがよい。
 第四に、資料4「(素案)」について。自転車の快適な走行を約束することという趣旨を入れたい。
 現行法を改正してしかるべき点もある。たとえば自転車は、丁字路の直進、交叉点の左折はいつでも行ってよいのではないか。
 また、「ルールの周知徹底・マナーの向上」にはドライバーのルール遵守についても入れるべきである。
片山: 50年・100年後の自転車専用道など、漫画チックでよいから片隅に夢を描きたい。 
 ところで、自転車道のあるところで、自転車が車道を走ると罪になるか。
交通規制課長: 自転車道があるのにそこ以外を自転車で走ると違反になる。
小林: しかも自転車道では相互通行である。
片山: 相互通行のルールが必要であろう。
交通規制課長: 自転車道はそれ自体「一の車道」だから左側通行の義務がある。*3
片山: 罰がないから無秩序となる。
小林: 自転車活用推進研究会の調査では、歩行者と自転車の事故の圧倒的多数で自転車が逃走している。
 警察に届けられるのはごくわずかである。
 近ごろはピスト自転車の取締りを徹底して行うべきである。*4
片山: 流行り廃りもある。


座長: 全体を通じて。副座長の意見は。
副座長: 「(骨子)」の「8つ取り組み」について。
 「適切な走行空間の分離」の項では、空間の余裕のないところをどう扱うか。
 自動車を一方通行にして空間を生み出すというような内容も入れたい。あるいは「ネットワーク計画の推進」の項で扱うのがよいか。
 植栽に関しては、参考資料4の3頁で板橋、5頁で仙台の例が掲げられている。
 仙台では植栽を取り除いた。施策ではあるとしても、闇雲に植栽を除去してよいか、除去する際の理屈づけが必要である。
 また、沿道の民地活用については、さまざまな方法を試みたい。
 「(骨子)」「その他の留意事項」に「交通安全対策」が掲げられていることに違和感がある。安全は議論全体のテーマであるはずなのに。
 「(素案)」12頁では、生活道路における安全に論点が特化しているようにみえる。
森山: 「(素案)」6頁、自転車道の整備が長期的な取り組みでは困る。
 こわいから右側を走るという例が珍しくない。一方通行路では左側に誘導する策など、打開策を順位だてして実行すべきである。
座長: 計画から管理という過程にいかに多くの当事者が参加するかが重要である。
 パートナーシップの重要性をもっと前に位置づけてはどうか。ネットワークに言及するあたりか、あるいは冒頭か。
 歩行者の安全と自転車のルール遵守は最重要。
 目標については、ネットワークには時間がかかるが、緊急的に、速やかに達成すべき目標も必要である。
 要する時間の長短を分離して書き込む必要がある。その際、カネのない自治体をどうするかという問題も生ずる。
 歩道と車道のどちらが安全かという議論では、適切な車道通行に基づくデータが日本にはない。速やかに調査すべきである。
 本日の議論でいいたりないことがあれば事務局にメールなどで伝えていただきたい。
道路交通安全対策室長: スケジュールがタイトだがよろしくお願いしたい。
2:05

*1:6/14成立、拙稿同日付

*2:これに関して私の行った行政文書開示請求とその結果について拙稿2/111/19付

*3:現行法における「自転車道」の解釈について同2/4付。付随して生ずる施策の問題について5/14付

*4:ブレーキのない違法自転車の流行を助長しかねない広告などについて同4/10付ほか。