富山「自転車専用路」事件顛末

kogkog2008-12-16



久しぶりに「自転車ツーキニストのための掲示板」を見たら、なにやら富山県で容易ならざる事態が出来した模様です。


記事「自転車専用路、年内にも通行開始 富山 地域YOMIURI ONLINE(読売新聞)、下掲。
写真「年内に使用が始まる見通しの自転車専用レーン(9日、富山市で)」、上掲。


問題は次の一文。

専用路は、車が走行するのと同じ方向に向かう自転車の片側通行が基本だが、県警と交渉した結果、専用路の中は、自転車が双方向で通行できるようにした。


車道の端で自転車が双方向通行だって?
そんな某迦な話があるかというわけで、本日、富山県警察本部交通規制課に電話してみました。以下要旨。


我 「読売新聞報道に”専用路は、車が走行するのと同じ方向に向かう自転車の片側通行が基本だが、県警と交渉した結果、専用路の中は、自転車が双方向で通行できるようにした。”とある。これは法令上如何なる根拠により可能なのか。」
彼 「県警は取材を受けていない。富山土木センターに照会したところ、読売新聞の誤報とのことであった。」
我 「報道写真では、当該自転車専用路は何ら工作物で区画されていないようにみえる。したがってこれは道交法上の自転車道ではなく、車両通行帯に自転車専用の規制を行うものであり、双方向の通行はできないとの理解でよいか。」
彼 「そのとおりである。」
我 「報道文に”2メートル80の専用路のうち1メートル50には『自転車専用路』の路面標識を設けた”とある。報道写真をみると、車道左側端から数えて1番目の車両通行帯の全幅のうち、左側端から2/3あたりまでが青色に着色されている。この着色は道交法上の規制を示す道路標示ではなく、ひとつの車両通行帯の一部を着色したにすぎないと解してよいか。」
彼 「そのとおりである。本来は自転車専用の車両通行帯の全幅を着色すべきかもしれない。しかし、自動車と自転車の間隔をとりたいこと、自転車の並進を防止したいことなどから、自転車を左側端に誘導するために部分的な着色とした。」
我 「自動車の通行すべき空間を減じ、車道上に自転車専用の車両通行帯を設けるのは、自転車を自動車に代わる交通手段として活用する上で最も有効な方法のひとつであると考える。自動車運転者・自転車運転者ともにルールを守らせることと併せ、違法駐停車の取締りなども徹底して実施し、今回の試行を成功させていただきたい。」
彼 「諒解した。」


次いで富山県富山土木センター施設管理課へ電話。以下要旨。


我 「県警に電話照会したところ、読売新聞誤報とのことである。」
彼 「取材対応と異なる内容の記事となったので、読売新聞に苦情を申し入れた。記者の誤解のようである。」
我 「自動車の通行すべき空間を減じ、車道上に自転車専用の車両通行帯を設けるのは、自転車を自動車に代わる交通手段として活用する上で最も有効な方法のひとつであると考える。今後の広報には万全を期し、今回の試行を成功させていただきたい。」
彼 「諒解した。」


以下、読売新聞記事全文引用。

自転車専用路、年内にも通行開始


 国や県、県警、富山市が今年度からJR富山駅南口周辺をモデルに、車道と歩道を区分して整備してきた2か所の「自転車専用路」のうち、富山市東田地方から北新町交差点間の南北約450メートルの区間が早ければ今月中にも、使用が始まることになった。国土交通省警察庁が、自転車と歩行者の衝突事故防止のために全国98か所で指定した一つで、県内では初めて。付近住民には専用路への期待とともに、「車道との仕切りがなくて怖い」といった声も出ている。


 県富山土木センターによると、今月中にも使用が開始されるのは、同市東田地方から北新町交差点の県道富山港線約450メートル。これまで3車線だった自動車道の1車線をなくし、横幅2メートル80の自転車専用路を両側に設けた。


 専用路は、車が走行するのと同じ方向に向かう自転車の片側通行が基本だが、県警と交渉した結果、専用路の中は、自転車が双方向で通行できるようにした。専用路は、バイクや歩行者も通行も出来ず、歩行者は専用路横の歩道を歩くことにした。2メートル80の専用路のうち1メートル50には「自転車専用路」の路面標識を設けたほか、間もなく、標識の看板も設置される見通しだ。


 同センターは9月末に工事を発注し、10月中旬から造成工事が始まり、今月8日、工事は完了した。県警が看板設置や告示行為を行い、早ければ年内にも使用される見込みとなった。


 同センターは、これまで県警と共同で2回、地元への説明会を実施。県内では初の試みで、専用路にはショッピングセンターもあり、ほかの地区からの利用者も多い。このため、近くに住む男性(52)から「説明会を地元以外の地区でも開いてくれないと、利用方法が分からない。専用路と車道の間に仕切りもなく、怖くて使えない」と不安視する声も出ている。


 県富山土木センターは「初めての試みのため、説明会などは今後、県警と協議したい」と話している。


(2008年12月10日 読売新聞)