県民タウンミーティング「たばこ対策と受動喫煙防止条例(仮称)」

kogkog2009-01-18


14日付からつづく。
標記出席。配付資料と手書きメモから以下に概要を速報する。文責kog。


日時 '09年1月18日(日) 13時〜16時
会場 神奈川県民ホール(横浜市中区)大ホール
司会 アナウンサー 原 良枝 氏


1 公共的施設における受動喫煙防止条例(仮称)素案の説明
  神奈川県知事 松沢 成文 氏


 1月13日の素案修正版までの概説。投影画面とその印刷資料による。約30分。


2.意見発表


 これまで条例案の検討に関与してきた識者の意見発表。持ち時間1人10分。
 順番は抽籤で決定されたとのこと。


2.1 株式会社ハングリータイガー 取締役 中田 有紀子 氏
 創業以来40年、横浜を中心に最大30店舗で飲食店経営。
 '02年、BSE問題の影響で売上激減。3店舗を残して売却し現在6店舗。
 '99年から全店禁煙とした。従業員の健康のため。売上に影響はなかった。


2.2 国立がんセンター研究所 たばこ政策研究プロジェクトリーダー 望月 友美子 氏 
 神奈川県の人口9百万は欧州の小国並みである。ここで禁煙条例が定められることには大きな意義がある。
 受動喫煙は他人に危害を加える行為である。煙は鉛やダイオキシン同様の汚染物質であるとの認識も必要かもしれない。
 飲食店などの経営者は目の前の喫煙者の背後に多数の非喫煙者の存在することを忘れてはなるまい。


2.3 神奈川県遊技場協同組合 理事長 平川 正寿 氏
 修正素案で風営法対象施設について規制が努力義務とされたことにまず感謝申し上げる。
 利用者の77%が喫煙者という業界で一律の規制は死活問題となるところであった。
 今後の自主的取組として、喫煙・禁煙の明示を検討していく。


2.4 神奈川県喫茶飲食生活衛生同業組合 理事長 八亀 忠勝 氏 
 条例案は悪法であり断乎反対である。
 分煙はできない。禁煙にしたら売上減は明白である。修正案は小規模店の規制を先送りにしているだけである。
 このようなすばらしいことは、総選挙も近いことでもあり、知事は国政の場で実現すればよい。
 (時間を経過してなお話し続ける発表者に対し会場から「早く引っ込め」「話させてやれ」等々の不規則発言の応酬があり一時騒然となった。)


2.5 神奈川県旅館生活衛生同業組合 副理事長 江成 尚男 氏
 組合員307のうち半数が箱根・湯河原の旅館である。75%が県外からの客である。
 条例の趣旨は理解する。
 周知のための広報を全国に向けて時間をかけて行うべきである。


2.6 小児科医 藤原 芳人 氏 
 愛煙・嫌煙という範疇で子供の受動喫煙被害を論ずることはできない。子供の前での喫煙は虐待行為である。
 子供の尿中コチニン濃度は、家族の屋内喫煙で15倍、ドア閉鎖屋外喫煙でも吐息・衣類からの受動喫煙で2倍に達する。
 条例には、禁煙・分煙・喫煙可の表示義務付け、受動喫煙施設への子供の立入禁止を定めるべきである。
 (前段は投影画面による説明。印刷資料は会場内ロビーに備え置かれ、入手することができた。)


3.知事との意見交換


 10分間の休憩後、発言希望者が会場で投函した申込用紙から抽籤で10名が選ばれる。
 発言者は壇上席で待機、抽籤順に中央演壇で1人3分の持ち時間で発言。
 壇上反対側には知事ほか保健福祉部長・健康増進課長なども列席。 
 発言に対する知事のコメントは5人分ずつまとめて行われた。


3.1 千葉/Mr.N
 健康を第一に考えられたことに感謝する。質問3点。
 1) 本日発言のあった同業者組合など、各事業者の組織加入率はそれぞれどのくらいか。
 2) 飲食店の売上への影響など、相反する事例もある。どう考えたらよいか。
 3) 県施設での禁煙実施状況はどうか。先ほど休憩時間中、館内で扉ひとつ開いたところから煙が匂った。


知事
・業者組合はかなり細分化している。組織率など詳細は把握しきれていない。
 組織に加入していない経営者などからも話を直接きいている。小規模店から条例に賛同という意見もあった。
・売上への影響などについては、香港やアイルランドできいた。たとえばレストランとバーで異なる。国によっても異なる。
・県庁は建物内、県立高校は敷地内全面禁煙などの取り組みである。


3.2 鶴見/Mr.S
 分煙設備を整備した事業者に融資の返済免除や減税などは考えているか。


知事
・事業者の分煙設備に公のカネを出すべきではない。
 第一に、すでに健康増進法で施設管理者の努力義務が定められている。
 第二に、先行して整備した事業者との間に不公平が生ずる。
分煙設備については融資・利子補給制度や技術支援などを拡充する。 


3.3 鎌倉/Mr.A
 1) スターバックスドトールでは棲み分けが行われている。規制でなく智慧で解決することも可能ではないか。
 2) 県ではなく国がやるべきことではないか。


知事
・全国展開の企業ならその分煙施策もよく知られるであろう。個別の経営の店舗では禁煙・分煙などの表示は必要である。
たばこ規制枠組条約を批准した以上、禁煙施策はまさに国が行うべきことである。
 国では財務省厚労省の足並みが揃わない。財務省はたばこ税収を司り、またJT筆頭株主でもある。国会議員に喫煙者も多い。
 国のできないことを神奈川がやる。神奈川から国を変える。


3.4 相模原/Mr.Y
 1) 条例が守られるようにすることがだいじである。先ほど休憩時間中も館内で煙のにおいがした。
 2) 路上喫煙の問題もある。飲食店なら喫煙可なら行かなければよいが、路上では煙を避けがたい場合もある。


知事
・違反に対しては行政罰の過料を科す。


3.5 浜松/Mr.K
 私は内科医で喫煙問題に取り組んでいる。たばこで1日に400人が死んでいることになる。 
 禁煙推進は因習からの訣別という側面がある。行政が最後についてくるのが常だが、率先して条例化するのは画期的である。
 経済情勢が厳しくても今やるべきである。


知事
・経済と健康が相反するのは難しい問題である。しかし不況も禁煙は世界的な動きである。
 本条例に反対するなら、たばこ批准枠組条約から抜けようという運動になるはずである。
 このままでは日本が世界に立ち遅れることになる。


3.6 杉並/Mr.Y
 条例化の動きに感謝する。私は16年前に禁煙タクシー第1号となった運転手である。
 タクシー禁煙の遅れていた神奈川で、松沢知事の要請もあって全面禁煙が実現し、さらに関東一円に波及した。
 国のスタンスは「喫煙を断ることができる」というものである。本条例でタクシーも禁煙とすることを望む。


知事
・タクシーも本条例により禁煙となる。 


3.7 横浜市中区/Mr.K
 1) 私は飲食店を営んでいる。喫煙規制に例外を認めるべきとの署名を小規模店中心に集めた。
  公布から1年後の施行、その3年後の見直しでも小規模店の例外は残すべきである。
 2) たばこで早死にすれば長生きするより医療費削減になるのではないか。


知事
・小さい店ほど受動喫煙被害は大きい。将来は禁煙とすべきである。それまでに意識改革が必要である。
 たばこ規制枠組条約健康増進法が条例の背景にある。いずれの定めにおいても受動喫煙防止に努力しなければならない。
 その努力がなされなければ規制の議論もありうる。
・健康で長生きが多くの人の望みである。この条例はそのための環境整備を行うものである。
 長生きにカネがかかるから早死にがよいなどとは極論であろう。


3.8 目黒/Mr.K
 私は肺癌の診断を下す立場にある。
 路上喫煙が問題である。家の前が小学校で敷地内禁煙のため、行事などがあると親が路上喫煙し煙が流れてくる。


知事
 路上喫煙の規制は市町村が行っている。個別の道路の状況などは市町村が最もよくわかっているからである。
 県は広域行政の立場で条例を定める。

 
3.9 東神奈川/Mr.K
 私は漫画家の高信太郎である。自宅近くの銭湯3軒がいずれも喫煙可で困っている。
 そのうち1軒は松の湯という。松だけにヤニが抜けない。


知事
 銭湯も条例による規制対象である。神奈川県はセントウに立って進んでいるのである。


3.10 東京都大田区/Ms.H
 1) 私は職場で受動喫煙被害にあっている。
 2) 飲食店について、条例により一斉に禁煙となれば売上減となるとは考えにくい。


知事
 職場の禁煙については労働安全衛生法の定めがあり、本条例の対象外とした。


4 おわりに 


 プログラムにはないが、司会に導かれて知事によるまとめが行われた。約10分。


・発言は10名だったが、多くの方々の代弁となったのではと思う。
・1人の少年をご紹介したい。大石悠太君、いますか?(客席前方で詰襟の少年起立、一礼。)
 彼は静岡の高校生。小4で喘息を患い、中学のとき歩行禁煙を求めて2万4千名の署名を集め、議会を動かして条例制定に到った。
 多くの条例がポイ捨てと火の危険を防ぐことを目的とする中、この条例は受動喫煙防止を謳っている。
 大石君はWHOからも表彰された。やればできるということを私は彼から学んだ。
・今回の修正で風営法対象施設と小規模飲食店を対象から外した。努力を約束してくれたからである。
 知事が妥協したとの声もきこえる。しかしこれは健康と経済を両立しうるぎりぎりの案であると思う。
 規制に反対の意見もある。徹底するには規制が不十分との意見もある。
 百年かかるかもしれない議論に結論を出すのが政治家の役割である。
・本来は国がやるべきことである。なぜ神奈川がやるのか。神奈川だからできるのである。
 先進力、協働力などを称して「神奈川力」という。情報公開や環境アセスメントなども神奈川がさきがけとなって国が動いた。
・この条例は社会に変革を求めるものである。既得権益で社会は変わらない。
 先進的な神奈川からみんなの力を合わせて実現したい。
・本日の成果も踏まえ最終案をまとめる。勝負は2月県議会である。
 身近に県議がいたらぜひ理解と協力を求めていただきたい。