乗車人員の制限

自転車の乗車人員の制限についての定めは、法本則が都道府県公安委員会に委任しています。

道路交通法第57条第2項 公安委員会は、道路における危険を防止し、その他交通の安全を図るため必要があると認めるときは、軽車両の乗車人員又は積載重量等の制限について定めることができる。

これに関し、下掲書に少々興味深い記述をみつけました。昨年の政令改正へのパブリックコメント拙稿'08/4/5付「4.2 自転車の複数人乗車について」で述べたことに共通する点もあります。


道路交通法研究会*1 編著 「最新 注解 道路交通法」立花書房、2006年。ISBN-10: 4803712654

 この場合の「道路における危険を防止し、その他交通の安全を図るため必要があると認めるとき」とは、言うまでもなく、公安委員会が軽車両の乗車人員又は積載重量等の制限について定める場合の要件である。したがって、公安委員会は、このような必要性がないにもかかわらず乗車人員又は積載重量等の制限を定め、あるいは交通安全以外の観点、例えば美観上、風紀上等の観点から乗車人員又は積載重量等の制限を定めることは、許されない。また、このような制限の権限を公安委員会に委任しているのは、もちろん、都道府県の交通事情の特殊性を考慮したことによるものと考えられるが、他方、道路交通は、例えば軽車両による場合であっても都道府県の区域を越えて行われることが多いから、公安委員会は、乗車人員又は積載重量等の制限を定める場合には、他の都道府県、特に隣接する都府県との均衡を十分に考慮すべきであろう。
 「制限について定めることができる」というのは、軽車両の乗車人員又は積載重量等の制限を定める権限を公安委員会に与えたという意味である。すなわち、軽車両については、すでに述べたようにその危険性が少ないことから、法は、直接その乗車人員又は積載重量等の制限を定めることとしていないが、公安委員会が道路における危険を防止し、その他交通の安全を図るために必要があると認めるときは、軽車両についてもこれらの制限を定めることができるものとした。
 この場合の制限は、公安委員会規則で定めることになる。

みられるように、公安委員会の意思決定にあたり、法の求める要件のほか、考慮すべき点について言及しています。


さて、公安委員会の定める制限を改めるにはどうするか。
まずは思いつくのは、都道府県公安委員会規則の制定趣旨や制定手続などについて行政文書開示請求を行い、法の求める要件を満たしていることが明らかにならない場合は、規則制定が不適法であるとして改正を求めていく、といったことでしょうか。


ただ、乗車人員に制限を加えると道路交通の円滑が阻害される、といった構成は難しいのかもしれません。

道交法第1条   (略)道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、  (略)
同第57条第2項 (略)道路における危険を防止し、その他交通の安全    を図るため(略)

*1:はしがきの名義は「平成18年9月 警察庁交通局長 矢代隆義」なので、一定の権威づけとなっているのかどうか。