においの捨象
きのふの夕餉 外神田 左々舎
尾張國の賓客をお迎えするにはやはり江戸名産がよかろうというわけで、小泉先生の前掲書 *1にとりあげられていた店へ連行。
まず註文したのは飛魚1尾と青むろ鯵2尾、卓上の炭火焜炉で焼く趣向である。
しかし、意外なほど、におわない。
女将に訊くと、近ごろは昔のものほどにおわなくなったという。においを忌避する世情を反映して?
火はすぐに通る。
焼きすぎないのがこつと女将はいう。
表面が熱く、中身がしっとりという加減の味わいが絶妙である。噛み締めてにおいのほかに広がる深い旨味こそくさやの真髄といえよう。
どちらかといえば鯵はこってり。飛魚はどことなく上品に感じられる。
硬いことで知られる飛魚の骨も、身を食べた後でしばらく炙ってるうちにばりばりいけるようになって完喰。
あまりににおわないことに一抹のものたりなさを感じつつ家路につく。
途中で改めて身中からにおいの核心がしみ出してくるような心持ちがした。
とはいえ帰宅後のあゆこさんinspectionは指摘事項なし。