猪篇

きょうの猪は丹波の野生だそうです。ところが!
鍋に味噌をといて煮立つなり、中居さんが皿一面の肉をすべて入れてしまうのに吃驚!
え?こんな、血と脂のしたたるような肉を煮ちゃうの??


野生の猪肉は、煮るほどに美味しいのだそうです。
まず肉を入れ、その上で野菜を煮てつまむうち肉が煮えて、美味しくなるのだそうです。
それが江戸の伝統。きょうは伝統にしたがうことにしましょう。


とはいうものの、中居さんが去るとすかさず生煮えの肉をつまみ出し、とりわけてくれたのはまめさん。
滋味。しかしかたい。さすがに野山を駈けめぐって鍛えた筋肉らしい味わいです。


味付けは甘めの味噌仕立て。
すきやき風なのですが、卵は使いません。卵は文明開化の牛鍋以降ですものね。
卵なしで完結するように味噌が調合されているようです。


味噌の甘さと芹の苦味の調和など楽しむうち、肉が煮えてきました。
さきほどのかたさがうそのようにやわらかくなっています。
豚でも猪豚でもない、まさに猪。丹波の山の草いきれまで伝わってくるかのようです。


鍋の汁はだしと脂でこってり。後ほど、ごはんにかけたり、うどんを煮たりしていただきました。
いかにも精がつきそうですね。


寒い夜、風邪気味の体をあたためむとて、吉良上野介義央が妾宅で禁制の牡丹鍋をつつく場面が、数年前のNHK大河ドラマ元禄繚乱」にありましたっけ。
吉良邸は本所松坂町。すぐ近くですね。