「提言」の意義と限界

[提言]はまず、「自転車を主要な交通主体の一つとして明確に位置付け」ようとしています。
そして、自転車の「走行性能等を発揮するために」、「車道通行の原則を維持」する方針を示しています。
このことが道路交通行政に銘記されるならば、画期的な意義のあることではないかと思います。


しかし、自転車に等しく車道を走らせると危険なこともある。だから、小児など例外を定めて、歩道通行を容認せざるをえない。
こうした考え方は、米加州、独、仏など、外国にもみられるそうです。
今の日本でも、歩道から自転車を完全に排除するというのは、もはや現実的ではないのかもしれません。


車道が危険であるといっても、提言はそれを所与のものとして扱っているかのようにみえます。「提言」の限界がここにあると思います。
車道の危険も人がつくりだすものであるはずです。車道で自転車が自動車と共存するために、自動車運転者は如何にふるまうべきか。
こうした視点が「提言」に欠けています。自転車と自動車の共存を謳いながら、その具体的な内容はありません。
まず自動車運転者に対し、車道における自転車との共存について、運転免許制度のもと、徹底して教育と取締りを行うべきではないのか。
自転車の歩道通行容認はそのはるか先の方策ではないのか。
知識も技術も遵法意識も多様な自転車運転者が歩道で歩行者と共存するのは、容易なことではなさそうです。